最新記事

中台関係

台湾近くに極超音速ミサイル「東風17号」を配備した噂を否定しつつ中国紙が明かしたもっと大きな標的

China Media Plays Down Hypersonic Missile Deployment 'Speculations'

2020年10月21日(水)17時05分
ジョン・フェン

建国70周年を祝う軍事パレードで公開された極超音速ミサイル「東風17」 Jason Lee-REUTERS

<台湾攻略に東風17号は必要ない。もしそれを東海岸に配備したとしたら、標的は明らかにアメリカだ>

中国が、台湾に近い場所に極超音速ミサイルを配備したとの報道を、中国国営メディアは「憶測にすぎない」と一蹴した。だが同時にこの報道からは同時に、いざとなればこれらのミサイルがどう使用されそうかも浮き彫りになった。

ここ数カ月、台湾海峡の緊張は増している。9月に人民解放軍が上陸を想定した実弾演習を行ったのに対し、台湾も上陸阻止のための訓練を行うなど、狭い海峡を挟んでにらみ合っている。

そんななか、香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は10月18日、匿名の情報筋の話として、中国の人民解放軍が中国東南部の沿岸に極超音速ミサイル「東風(DF)-17」を配備したと報じたのに対し、中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹紙である環球時報は10月19日付けで長文記事を掲載した。

DF-17は中国で最も高性能の極超音速ミサイルで、最大で1550マイル(約2500キロ)の射程距離を持ち、これまでのミサイルよりも正確性が増しているとされると、SCMPの記事は伝えた。

だが環球時報は、ある軍事専門家の発言を引用する形で、こうした高性能ミサイルを台湾に用いることは、その射程距離を考えると「能力のムダ使い」になると伝えた。

米軍への「接近阻止・領域拒否」が狙い

DF-17極超音速ミサイルが初公開されたのは、2019年10月1日。中華人民共和国建国の日に北京で行われた記念軍事パレードでのことだ。幅100マイル(約160キロ)ほどしかない台湾海峡の10倍以上の射程距離を持つ。

「(台湾)島と中国本土は距離が近いため、台湾の軍事拠点を爆撃するのは簡単だ」と、環球時報は記している。DF-17が配備された場合、このミサイルは「人民解放軍の作戦中に台湾問題に武力介入を企てようとするより強力な敵勢力、および中国の主権と領土の保全を脅かすその他の脅威を想定するものだ」という。

「台湾の軍事拠点は、人民解放軍のミサイル発射装置、および軍用機が搭載する空中発射式ミサイルの完全な射程内にある。そのため、台湾を爆撃するために高性能のミサイルを用いるのは、能力のムダ使いになるだろう」と、匿名の軍事専門家の発言を引用する形で、環球時報の記事は述べた。

DF-17が台湾付近に配備されたというSCMPの報道については、台湾の防衛アナリスト蘇紫雲も、極超音速ミサイルの使用想定に関して異を唱えている。

台湾政府が資金を拠出する研究機関、国防安全研究院の主任アナリストを務める蘇は、台湾の自由時報の取材に答え、極超音速弾道ミサイルは、台湾海峡で紛争が起きて外国の軍が干渉しようとした場合に、「接近阻止・領域拒否」を目指す中国の軍事戦略のために使われるだろうとの見方を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀ピル氏、4月インフレ低下予想に過度に安心しな

ワールド

パキスタン首都で自爆攻撃、31人死亡 シーア派モス

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、2月速報値は小幅改善 物

ワールド

米イラン高官が核協議、アラグチ外相「継続で合意」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南山」、そして「ヘル・コリア」ツアーへ
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 9
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中