最新記事

韓国

韓国の新法相、秋美愛氏にも不正疑惑で、文在寅不信広がる

2020年9月24日(木)17時20分
佐々木和義

兵役義務のある若者の間で不満の声が広がる

法務長官の息子の軍務にかかわる疑惑に20代から30代の若者の間で不満の声が広がっている。韓国人男性は、満20歳から28歳の間に約2年間の兵役が義務付けられている。陸軍は18ヶ月、海軍は20ヶ月、空軍は24ヶ月で、除隊後も8年間は予備役として、また、40歳まで民防衛隊に所属して訓練を受ける。

兵役期間中は、軍事訓練に加えて徹底した反共教育が行われ、北朝鮮に対する憎悪が植え付けられる。2010年3月、哨戒艦の「天安」が沈没して、乗組員104名のうち46名が行方不明になった。犠牲者の大半が20歳と21歳だった。沈没した天安を引き揚げた現場周辺で北朝鮮製大型魚雷の残骸が発見され、調査団は朝鮮人民軍の魚雷攻撃による沈没と断定した。また同年11月には仁川市の延坪島砲撃事件で砲撃戦が起き、今年の5月にも江原道鉄原の非武装地帯(DMZ)で銃撃戦が発生した。

兵役は肉体的にも精神的にも過酷で、ストレスに耐えかねた兵士が手榴弾を投げ、銃を乱射して同僚を殺害するといった事件が数回起きている。北朝鮮から母国を守るという使命感が、厳しく生命の危険がある訓練に耐える原動力となっている。

文在寅政権不支持率が支持率を上回った

兵役は、政財界のトップの子息も免れることはできないが、優遇疑惑が囁かれている。法務部長官の息子が所属したカトゥサは米軍と行動を共にする部隊で、生活環境や食事、休暇など一般部隊より優遇されている。さらに英語力が向上し、就職にも有利なことから人気が高く、部隊員は一定以上の英語力がある志願者の中から選抜される。入隊に介入した疑惑が生じたが、抽選で決まるとして介入疑惑を否定した。

優遇疑惑が常につきまとう政財界のトップは、自らはもちろん兵役に従事する子にも身を律するよう教示するのが一般的だという。

兵役での教育方針と矛盾する文政権の北朝鮮政策に対しては意見が分かれるが、兵役を経験した世代は、優遇そのものより謝罪をしない秋美愛長官に大きな不満を抱いている。また、優遇疑惑が深まるなか、最近行われた演説では、「公正は政府の揺れない目標」と話す文在寅大統領に対する不信も広がり、政権不支持率が支持率を上回った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中