最新記事

日中関係

反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船」船長の意外すぎる末路

2020年9月11日(金)18時00分
青沼 陽一郎(作家・ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

10年前、沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺で発生した日本の海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件。写真は2010年9月7日撮影の中国漁船。海上保安庁提供(2010年 ロイター)

「日本の船から俺の船にぶつかってきたんだ! 俺の船からぶつかったのではない。それなのに、日本側はこっちからぶつかっていったと言い張って。日本の取調官の2人のいばり腐った態度はひどすぎた。威圧的で、怖かった」

沖縄県の尖閣諸島沖で、中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船に体当たりした事件から、9月7日でちょうど10年になる。

事件発生の3カ月後、私は帰国した船長を追いかけ、彼の自宅で話を聞いている。その場でも、体当たりを仕掛けてきたのは日本の巡視船だった、と強く主張していた。

この事件を契機に、日中の国交が正常化してもずっと棚上げされていた尖閣諸島をめぐる領土問題が顕在化。2012年に日本が国有化してからは、中国の反発は一層激しくなった。

船長は何を語ったのか

習近平政権に移行してから海洋進出を強化してきた中国は、今年4月、かねて埋め立て、軍事拠点化してきた南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島、西沙(パラセル)諸島に、新たな行政区「南沙区」「西沙区」を設置。尖閣諸島周辺海域には、同月14日から8月2日まで111日連続で中国公船が現れ、日本の領海に繰り返し侵入している。

しかも5月8日には、領海に侵入した4隻の中国公船のうち2隻が、日本の漁船を追いかけ回す"事件"も発生している。

緊張の続く尖閣諸島。そこに火をつけた10年前の事件。中国漁船の船長は逮捕・送検されたが、中国側の圧力もあって、拘留期間延期中の9月24日に那覇地検は処分保留で急遽、釈放している。「取調官の2人」とは、那覇地検の検事のことだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バークレイズ、米自動車ローン会社関連で費用1.1億

ワールド

米ロ首脳会談の準備進行中、大きな障害ない=ロ外務次

ワールド

アングル:メローニ伊首相の3年間、成長より安定重視

ビジネス

アングル:日本株にくすぶる下げ加速リスク、高市トレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中