最新記事

米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算

アメリカ政治に地殻変動を引き起こす人口大移動──「赤い州」を青く染める若者たち

WHY RED STATES HAVE THE BLUES

2020年9月8日(火)19時45分
サム・ヒル(作家)、ハンク・ギルマン(本誌米国版記者)

magw200908_US2.jpg

2018年上院選では共和党現職のテッド・クルーズに民主党のベト・オローク(右)が肉薄 TOM FOX-POOL/GETTY IMAGES


大方の予想を裏切った前回(2016年)の結果も、長期的なトレンドを覆すものではない。例えばテキサス。まだ青ではないが、確実に青みが増している。2000年には共和党のジョージ・W・ブッシュが21ポイントの大差で勝利したが、2016年のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンにつけた差は9ポイントにすぎない。明らかに差は縮まっている。2018年の上院選では共和党現職のテッド・クルーズが民主党新人のベト・オロークに勝ったが、1978年以来の大接戦だった。

いったい何が起きているのか。単純に言えば、赤い州に引っ越す青い人(民主党支持者)が増えている。その理由は? ノースカロライナ州立大学のアーウィン・モリス教授によれば、移住者の大半は若い世代で、たいていは経済的な理由だ。つまり雇用を求めている。ついでに太陽と、素敵なビーチも求めているに違いない。

またオクラホマ州立大学のセス・マッキー教授らによれば、中西部からの移住者はやや民主党寄りで、西海岸からの移住者はほんの少し共和党寄り。そしてコロラドやカンザスなどの山岳・大平原地帯からの移住者は共和党色が強い。しかし最大の変数は北東部からの移住者で、彼らは圧倒的に民主党支持だ。そして数で見れば、2012年段階で南部への移住者の34%は北東部出身。31%が中西部出身で、残りの35%が西海岸と山岳・大平原地帯だった。

そうであれば、共和党にとって移民は大敵。ただしメキシコからの移民ではない、恐るべきはニューヨークからの国内移民だ。

例としてノースカロライナを見てみよう。この州は今のところ色分けしにくい。青が勝ったり赤が勝ったりしている。同州ソールズベリーにあるカタウバ・カレッジのマイケル・ビッツァー教授によれば「最近の世論調査でも、民主・共和両党の支持率は拮抗している」。ただし大統領選と同日に行われる州知事選では、民主党現職が共和党新人に8ポイントの差をつけている。

そもそも、超保守派の大御所ジェシー・ヘルムズが君臨していた時期(つまり20世紀末まで)のノースカロライナでは住民の大半が地元の人間だった。今は違う。ノースカロライナ州立大学の人口学者レベッカ・ティペットによると、1990年には州民の70%が州内の生まれだったが、今は56%だ。

2000年から16年にかけては、州外からの転入者が100万人いた。2018年には転入者の62%が北東部を中心とする青い州からの移住だった。

【関連記事】「赤い州」に誕生する民主党知事、「異変」が起きている
【関連記事】米大統領選で民主党が掲げたのは、かつて共和党が示した理想

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、エヌビディアが独禁法違反と指摘 調査継続

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中