最新記事

米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算

アメリカ政治に地殻変動を引き起こす人口大移動──「赤い州」を青く染める若者たち

WHY RED STATES HAVE THE BLUES

2020年9月8日(火)19時45分
サム・ヒル(作家)、ハンク・ギルマン(本誌米国版記者)

共和党の牙城と見られてきた保守州にも若い世代の住民が移り住んできている SHANA NOVAK-DIGITALVISION/GETTY IMAGES

<民主党優勢の州からの移住者増加によって、共和党の牙城は崩れつつある。「早ければ11月の大統領選で結果に結び付く」との見方も。本誌最新号「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集から>

その昔、アメリカ東部のバージニア州は赤(共和党のシンボルカラー)の牙城だった。が、今は青(民主党)だ。

同じことは西部のカリフォルニアやオレゴン、ワシントン、コロラド、ニューメキシコ、そして北東部のニューハンプシャー各州にも言える。南のアリゾナやノースカロライナも青に染まりつつある。もしかしたらジョージアやテキサスも。
20200915issue_cover200.jpg
ジョージアでは11月の選挙に向け共和党の現職上院議員が苦戦している。ノースカロライナでは民主党の上院議員候補が優勢で、赤いはずのサウスカロライナでも共和党現職の大ベテランに民主党新人が肉薄する。

次の次の大統領選が行われる頃には、南部諸州の多くは青く塗られていることだろう。2018年のジョージア州知事選で共和党の牙城に挑んだ黒人女性ステイシー・エイブラムスが言うように、温暖な地域における民主党支持層の拡大は「向こう30年の国政選挙の趨勢を大きく左右する」可能性が高い。

人口学者や選挙のプロは早くからこうした傾向に気付いていた。今はそれを裏付けるデータがあり、早ければ11月の選挙でそれが結果に結び付く気配もある。そうなれば民主党は南部を取り返せる。

いや、南部の保守的な住民が急に内なる進取の気性に目覚めたわけではない。青く染まりつつある要因は人口学的なもの、いわゆる「世代の入れ替わり」だ。こうした州でも都市化が進み、北の青い州から移り住む人が増えている。彼らの多くは民主党支持で、その投票行動や政治姿勢は南部に来ても変わらない。

共和党にとっては由々しき事態だ。作家でアナリストのクリスティン・テイトに言わせれば、それは「赤いアメリカに対するリベラル派の侵略」。会社も人も高税率・低成長の青い州を逃げ出して低税率・高成長の赤い州に移ってくる。「私の住む(テキサス州)ヒューストン周辺でもカリフォルニアからの移住がすごく増えた。ここなら中流家庭でも家を買えるからだ」とテイトは言う。

経済的な理由で北から南へ

これが21世紀版の人口大移動。その概況については32ページの地図(※本誌ママ、下記地図)を参照されたい。私たちはブルッキングス研究所の人口統計学者ウィリアム・フレイらの協力を得て、2000年以来の人口移動のデータと大統領選における票の出方を州ごとに比較検討した。州の色は、共和党の票が増えれば赤く、民主党の票が増えれば青く染まっていく。

magw200908_USchart.jpg

本誌2020年9月15日号 31ページより

【関連記事】「赤い州」に誕生する民主党知事、「異変」が起きている
【関連記事】米大統領選で民主党が掲げたのは、かつて共和党が示した理想

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、エヌビディアが独禁法違反と指摘 調査継続

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中