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日米同盟

安倍晋三は「顔の見えない日本」の地位を引き上げた

The Abe Era Ends, Cheering China, Concerning Washington

2020年9月1日(火)14時00分
マイケル・オースリン(スタンフォード大学フーバー研究所)

安倍は8月22日の辞任表明で、北朝鮮による拉致問題の解決やロシアとの平和条約締結、憲法改正などの政治課題を果たせなかったことを悔やんだが、全体として安倍は、その8年近い在任期間の間、アジアで最も有能かつ成功した指導者だった。最近では、新型コロナウイルスの感染爆発を回避したし、安倍が首相に返り咲いた2012年と比べると、国際社会における日本の地位ははるかに上がったし、アジアでもその他世界でもより大きな役割を果たした。

安倍は日本で最も人気のある首相でもあった。近年の様々な疑惑にもかかわらず、安倍ほど権威のある指導者はいなかった。中国も北朝鮮も、安倍の前の首相たちのような顔のない指導者が次に来るようにと祈っていることだろう。特に、安倍ほどアメリカ大統領と懇意ではない首相が望ましいと。

アメリカが安定した日本に慣れ過ぎてしまった今、今後は嬉しくない驚きが待っているかもしれない。米政府は過去10年近く、日本の指導者が日米同盟に完全に忠実で、国会でも多数の支持を得られて、世界第3位の経済大国にふさわしい役割を果たすかどうか、心配する必要がなかった。遠くない将来、アメリカと同盟国はそんな安倍時代を懐かしく思う日が来るかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

(翻訳:村井裕美)

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