最新記事

事件

交通違反の日本人に警官が賄賂要求 いまだ不正横行のインドネシア、国家警察報道官が謝罪

2020年8月27日(木)20時45分
大塚智彦(PanAsiaNews)

日本人が渡したお札を数えるバリ島の悪徳警官 KOMPASTV / YouTube

<コロナのパンデミックが終息して、また海外旅行に行けるようになったらご用心!>

インドネシアの世界的観光地バリ島で起きた地元警察官による交通取り締まりで、日本人のオートバイ運転手に法外な現金支払いを要求して違法に搾取していたことがわかった。この際の警察官の顔がハッキリとわかる動画がYouTubeに投稿され、すでに56万回再生されたことで事案が広く知られることになり、インドネシア警察も無視できなくなって当該警察官の配置転換をするなど処分をせざるを得なくなったとみられている。

投稿された動画などによると、事件は2019年12月にバリ島西部にあるジュンバナ郡マデウィーという有名なサーフスポットのある地区の道路で、警察官が検問実施中のできごとだった。

日本人のオートバイ運転手が1人の制服警察官に呼び止められて停車し、「どこから来たのか」「日本から」「日本からか」と会話が始まり、警察官が運転免許証と車両登録証の提示を求めるところから動画はスタートしている。

胸に「MD.WIRADA」と氏名がかかれたメガネの制服警察官は手際よく提示された書類をチェックして「運転免許証はOK」、「登録証はOK」と問題がないことを明らかにしていく。ところがオートバイのヘッドライトが点灯していなかったことを指摘して「これは問題だ」と注文をつける。

バリ島では昼間もオートバイは前照灯を点灯しての運転が義務付けられていることから、この日本人が前照灯をつけていなかったとしてこの警察官は「ペナルティ(反則)」という言葉を連発して、バリ州の交通ルール違反であることを強調しはじめた。

「ワン・ミリオン」の賄賂要求

その後この警察官は通常の交通違反のプロセスを踏んだ手続きでは40通りの手続きが必要になる、と説明してその煩雑な手続きを省くことを意味する「でも私が助ける」と述べて暗に「もみ消し」「見逃し」を示唆。

そのための手数料として現金、要するに賄賂が「ワン・ミリオン(100万ルピア=約8000円)」であることを日本人に告げる。

インドネシア語が分からないのか、あるいは分からない振りをしているのか、この日本人はまず1000円(約12万ルピア)示すが「ワン・ミリオン」と拒否される。さらに日本円の小銭をみせるとこのメガネの警察官とそれまで横でみていた別の警察官も加わって2人で「ワン・ミリオン」と繰り返し、不足であることをことさら力説する。

最終的にこの日本人は所持していた邦貨の1000円札9枚を手渡した。このメガネの警察官が受け取り「ワン・ツー・スリー」と9枚を数えて「OK、ノープロブレム」となる。

警察官は日本人に「コンテニュー」と言い、このまま旅を続けるように促して去ろうとする。最後に日本人が「ビデオOK?」と尋ねるが「仕事」を終えて用事が済んだと思ったのか、意味がよく分からなかったのか、はっきりとしないが警察官は何気に「OK」と答えた場面で動画は終わる。この間約3分。

なお通常の前照灯点灯義務違反の罰金は10万ルピア(約800円)という。


【話題の記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・韓国、新型コロナ第2波突入 大規模クラスターの元凶「サラン第一教会」とは何者か
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スペースX「スターシップ」、試験飛行準備中に爆発 

ワールド

ゼレンスキー氏、ロシアのイラン擁護に懸念 対ロ制裁

ワールド

ロシア・インドネシア首脳が会談、戦略的パートナーシ

ワールド

IAEA、イラン発表のウラン濃縮施設はイスファハン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 4
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 5
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 6
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 7
    全ての生物は「光」を放っていることが判明...死ねば…
  • 8
    下品すぎる...法廷に現れた「胸元に視線集中」の過激…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 8
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中