最新記事

デモ

ベラルーシの不正選挙抗議デモ止まず プーチンにも不安材料となる可能性

2020年8月23日(日)13時26分

ベラルーシで進行中の大規模な不正選挙抗議とルカシェンコ大統領退陣を求めるデモは、同国を勢力圏にとどめておきたいロシアのプーチン大統領にとって外交政策上の試練だ。2019年6月、ベラルーシ・ミンスクで撮影(2020年 ロイター/Vasily Fedosenko)

ベラルーシで進行中の大規模な不正選挙抗議とルカシェンコ大統領退陣を求めるデモは、同国を勢力圏にとどめておきたいロシアのプーチン大統領にとって外交政策上の試練だ。ロシア国内でも反政府派が勢い付いており、ロシアの内政問題に転じる能性もある。

9日実施の大統領選でルカシェンコ氏の圧勝が発表されて以来、ベラルーシでは選挙の不正への抗議活動が続く。

この動きは、ロシアの政治にも影響を及ぼしている。

ロシア極東のハバロフスクでは、プーチン大統領が地元の政治危機への対処を誤ったとして、プーチン政権に反発する人々が6週連続でデモを実施中。最近では「ベラルーシよ、永遠に」と支持の合言葉を叫び、西に9000キロメートル離れたベラルーシのデモにエールを送り始めた。

ハバロフスクのデモは期間の長さ、規模の大きさともにロシアでは異例だ。

「ベラルーシよ、ハバロフスクは君たちと共にある」と手書きされたプラカードを掲げる男性は、テレビ番組の取材に対し、ベラルーシ国民もロシア国民も不公正な政治システムに我慢できなくなっていると指摘。「自分はベラルーシとハバロフスクに共通点を感じる」と話した。それは単にデモを行っているということではなく、同じ目的、つまり「正直な選挙に票を投じて参加する権利」を求めて団結していることだという。

ロシアの野党有力指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏の支持者らも、ベラルーシの動向を注視していると話す。いずれロシアで同様の事態が起こった場合に備え、学びを得るためだ。

ベラルーシは、旧ソ連諸国の中で文化的、政治的、経済的にロシアと最も密接に結びついている国だ。両国は「連合国家」を目指す条約に調印しており、国旗は赤をあしらう旧ソ連スタイルだ。

ただ、プーチン氏はルカシェンコ氏とは別の存在で、近い将来にプーチン氏の支配体制が深刻に脅かされる兆しもない。それでも両国の関係の緊密さや、言語が共通している、つまりベラルーシもロシア語を公用語とすることから、ベラルーシの動向は必然的にロシア自身の政治情勢に影響し始めている。

カーネギー・モスクワ・センターのシニアフェロー、アンドレイ・コレスニコフ氏は、ロシアはベラルーシよりはるかに規模が大きく、社会的に民族などがもっと分かれている分断された国であるため、今すぐには、ベラルーシと同じことが起こる可能性は乏しいと言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラックロック、AI投資で米長期国債に弱気 日本国

ビジネス

OECD、今年の主要国成長見通し上方修正 AI投資

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、11月は前年比+2.2%加速 

ワールド

インドのロシア産石油輸入、減少は短期間にとどまる可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カ…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 8
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中