最新記事

朝鮮半島

コロナ感染疑いの「出戻り」脱北者、性的暴行容疑で逮捕状 下水管経由の越境、韓国軍に衝撃

2020年7月28日(火)18時54分

北朝鮮が発表した新型コロナウイルスに感染した疑いがある脱北者について、韓国当局は2017年に韓国に亡命し、先週、北朝鮮に戻ったと説明している。この脱北者には、韓国で性的暴行で逮捕状が出ていたとされるが、詳しい背景などはまだ分かっていない。写真は北朝鮮側にある監視施設。6月17日、軍事境界線近くの韓国坡州市で撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)

北朝鮮が発表した新型コロナウイルスに感染した疑いがある脱北者について、韓国当局は2017年に韓国に亡命し、先週、北朝鮮に戻ったと説明している。この脱北者には、韓国で性的暴行で逮捕状が出ていたとされるが、詳しい背景などはまだ分かっていない。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は26日、新型コロナ感染が疑われる脱北者が北朝鮮に戻ったとし、金正恩朝鮮労働党委員長が南北境界線付近の開城(ケソン)市を封鎖、非常事態を宣言したと報じた。

韓国は、北朝鮮に戻った脱北者の男について、名字を「キム」と特定。排水管を伝って漢江(ハンガン)に出て、泳いで北朝鮮側に渡ったしている。

韓国軍の朴漢基(パク・ハンギ)合同参謀本部議長は28日、議会で、身長163センチ、体重54キロのキムという男性が、下水管から漢江に出たと説明した。

韓国政府当局者はロイターに、キムは2017年に北朝鮮を脱出した時も同じ経路で韓国に入ったとみられると語った。

韓国警察によると、7月12日、20代の脱北者の女性がキムの家で彼に性的暴行を受けたと申し立てた。警察は21日にキムを一度聴取したが、容疑を否定したという。

しかし、キムの知り合いが19日に警察に、彼がその女性を脅し、北朝鮮への逃亡を計画していると通報。2日後にキムへの逮捕状が出た。しかし、このころにはキムはすでに北朝鮮に渡っていた。KCNAは、キムとされる脱北者を24日までに開城(ケソン)市で発見したとしている。

韓国の保健当局は、キムが韓国を離れる前に感染していた形跡はないと指摘。キムの濃厚接触者のうち少なくとも2人は検査で陰性反応が出たとしている。

チャンス求めて韓国へ

キムは6月、脱北者の仲間が撮影し、ユーチューブに投稿された動画で、韓国にわたった事情を説明している。

2016年、北朝鮮が核実験などを実施して南北関係が緊張、共同事業の開城(ケソン)工業団地が閉鎖された。経済的に困窮したキムは、韓国で活路見出そうと決意したという。

韓国でどのように生計を立てていたかはほとんど分かっていない。彼の素性を知るある人物は、開城から韓国に亡命した脱北者の少なくとも1人に2000万ウォン(1万6800ドル)の借金をしていたという。

この人物は「彼は多くの脱北者と同じく、安全保障関連の教師になりたいと考えていたが、パンデミックもあって実現しなかった」と語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・新型コロナウイルス、患者の耳から見つかる
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・がんを発症の4年前に発見する血液検査
・これは何? 巨大な黒い流体が流れる様子がとらえられる


20200804issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月4日号(7月28日発売)は「ルポ新宿歌舞伎町 『夜の街』のリアル」特集。コロナでやり玉に挙がるホストクラブは本当に「けしからん」存在なのか――(ルポ執筆:石戸 諭) PLUS 押谷教授独占インタビュー「全国民PCRが感染の制御に役立たない理由」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:韓国コスメ、トランプ関税の壁越え米で実店

ワールド

再送(8日配信記事)-赤沢氏「合意の結論に直ちに結

ワールド

ロシア、ウクライナ東部ドニプロペトロウスク州に進軍

ワールド

米中、9日にロンドンで通商協議 中国側は何副首相が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 6
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中