最新記事

米中対立

米中戦争を避けるため中国は成都総領事館を選んだ

2020年7月28日(火)13時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

成都の米総領事館 中国政府が閉鎖を命令  THOMAS PETER-REUTERS

ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を受けて、中国は27日、成都にあるアメリカ総領事館を閉鎖した。アメリカにダメージの大きい香港総領事館を選ばなかったのは、中国が米中戦争を避けているためだ。

アメリカによるヒューストンの中国総領事館に対する突然の閉鎖命令

アメリカ国務省は7月21日、中国政府がスパイ活動や知的財産の侵害を行っているとして、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館を72時間以内に閉鎖するよう命令した。それも、7月22日に中国ヒューストン総領事館が文書を燃やしているところが見つかり、火事の通告で消防署が駆けつけたために閉鎖命令が明るみに出ている。

ポンペオ国務長官は7月23日に演説し、世界各国と中国人民は「中国共産党の行動を変えるために共に闘おう」と呼び掛けた。

またポンペオは一歩進んで習近平(国家主席)を名指しで、「習主席は破綻した全体主義の信奉者で、長年の野望は中国共産党の世界制覇だ。中国共産党から自由を守ることは我々の使命だ」と述べている。

この演説を欧米のメディアは「新しい鉄のカーテン」と称している。

7月24日、ヒューストンの中国総領事館は完全に閉鎖された。

中国政府がアメリカ成都総領事館を閉鎖

中国外交部の汪文斌(おうぶんひん)報道官は、このような行為は絶対に許されるべきではなく中国は断固戦うと表明し、事実、中国政府は24日、四川省成都にあるアメリカ総領事館を72時間以内に閉鎖すると命令した。

その結果、7月27日に成都総領事館は閉鎖された。

外交部の汪文斌は「責任は全てアメリカ側にある。アメリカは直ちに誤りを正し、米中関係を正常な発展の軌道に戻すべく、アメリカは必要な環境、条件を作り出すべきだ」と反撃した。

中国はなぜ成都を選んだのか

中国にはアメリカの駐在機構として、北京にアメリカ大使館があるほか、上海、広州、武漢、成都、瀋陽および香港の計6ヵ所にアメリカ総領事館がある(現時点で成都なし)。

一方、中国のアメリカ駐在機構は、ワシントンD.C.にある中国大使館以外に、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ヒューストンの5ヵ所に中国総領事館がある(現時点でヒューストンなし)。

では、中国はなぜ成都を選んだのかを考えてみよう。

まず瀋陽は中国の東北部にあり、北朝鮮やロシアなどに近い。アメリカにとってある意味関心は高いだろうが、中国における重要度が低い。

武漢は新型コロナウイルス肺炎が流行し始めた時に、アメリカ総領事館のスタッフは大方が撤退し資料も大量に持ち出しているので、ここを封鎖してもアメリカには今さら大した影響をもたらさない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中