最新記事

人権問題

中国、香港国家安全維持法案を可決 欧米との対立激化も

2020年6月30日(火)15時55分

中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、「香港国家安全維持法案」を可決した。香港のケーブルテレビが関係筋の話として伝えた。写真は中国と香港の旗。北京で3日撮影(2020年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)常務委員会は30日、「香港国家安全維持法案」を可決した。1997年に英国から中国に返還されて以降、高度な自治が保障されてきた香港にとって歴史的な転換点になりそうだ。

欧米諸国は、「一国二制度」下で保障される香港の高度な自治が損なわれると警戒感を強めており、中国と欧米諸国の対立が一段と強まる恐れがある。

新法の下で市民の権利と自由が制限されるとの懸念や最も重い処罰は終身刑との報道がある中、香港の著名民主活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏は30日、政治団体「デモシスト(香港衆志)」から脱退すると表明した。

ウォン氏はツイッターに「世界が知っている香港の終わりを意味する」と投稿した。

米政府は29日、国家安全維持法の制定をにらみ、香港に対する優遇措置の縮小に乗り出した。香港への防衛機器の輸出を停止し、香港によるハイテク製品へのアクセスを制限する。

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は30日、同法案についてコメントするのは適切ではないと述べた上で、「いかなる制裁措置もわれわれを脅かすことは決してない」と述べて米政府の動きをけん制した。

中国国務院(内閣に相当)の香港マカオ事務弁公室傘下のシンクタンクの幹部、Lau Siu-kai氏はロイターに、国家安全維持法は賛成票162票を集め、全会一致で可決されたと明らかにした。ただちに施行するとみられる。

環球時報の胡錫進編集長は30日、同法の下で科すことのできる最も重い処罰は終身刑と述べた。

法案の詳細はまだ公表されていないが、中国は、国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託の4つが処罰対象になるとしている。

国営新華社通信は今月、同案の一部詳細を伝えており、新たな国家安全法制は香港の現行法に優先し、全人代常務委員会が法解釈の権限を持つとしている。

中国政府は香港政府の「監督、指導、支援」のために香港に国家安全維持公署を設置する見通しで、特定の案件で中国政府が管轄権を行使する可能性もある。

国家安全法に関する案件を審理する裁判官は行政長官が指名する。香港はこれまで、司法の独立を確保してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中