最新記事

都市封鎖

混乱のインドネシア、感染対策より政治優先の知事が規制緩和 邦人は日本料理店「闇営業」で対立

2020年6月8日(月)21時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)

8日、規制緩和初日を迎えたジャカルタ市内飲食店で AJENG DINAR ULFIANA / REUTERS

<いまだ感染者が増加を続ける首都ジャカルタで規制緩和が始まったが、不協和音が広がっている>

インドネシアの首都ジャカルタでは新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するためにとられていた「大規模社会制限(PSBB)」から「ニュー・ノーマル(新常態)」への移行期として段階的に数々の規制を緩和することをアニス・バスウェダン州知事が6月4日の会見で明らかにした。

しかし医療関係者などからは感染者数が全国34州で最も多く、依然として感染者・死者ともに増加を続けている現状から、制限緩和は「時期尚早であり感染拡大の危険がある」と反対の声が出る事態となっている。

ジャカルタ市内では制限緩和を受けて7日には公共施設周辺で運動する市民、市場やモールに繰り出す家族連れ、さらに早くも営業を再開した日本食レストランを含む飲食業者など、新型コロナ禍以前の賑わいに戻りつつある。

地下鉄、バス、近郊列車などの公共交通機関も営業時間、運転間隔などがほぼ通常の運行に戻っている。

外出時や公共交通機関の利用時にはマスク着用、体温検査、手洗い励行、衛生的間隔確保、乗客数制限などの「公衆衛生上のルール」の順守が「規制緩和」の条件として示されているが、実際にどこまで厳格に運用されるかは疑問であり、新型コロナ感染の第2波への懸念が高まっている。

政治的判断で制限緩和決めた州知事

アニス州知事が医療関係者らの反対にも関わらず「規制緩和」に踏み切った背景には、首都に溢れる失業者、生活困窮者、経営難に追い込まれている企業家やビジネスマンらによる経済的理由による「緩和要求」に応じざるを得ないという極めて「政治的理由」があったとされる。

それというのも、アニス州知事は2022年に州知事選挙を控えているほか、再選規定で次期大統領選に現職のジョコ・ウィドド大統領が立候補できないことから次期大統領候補として政党の一部が担ぎ出す動きもある。今回の制限緩和にはそうした自らの将来の政治生命を見据えた判断もあるのではないかとの観測もある。

そうした政治的理由を感染症対策より優先した結果の「規制緩和」とはいえ、ジャカルタ市民や企業などからは皮肉なことに一様に歓迎の声が上がるという現象が起きている。

毎日午後にオンラインで記者会見している保健当局者は、4日の規制緩和発表後は「規制緩和は規制の解除ではない」「守るべき衛生上のルールは厳守しなくてはならない」「ルール違反は他人に迷惑をかける」などと懸命のフォローを繰り返して感染拡大防止への市民の理解と協力を求めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米軍、イランの軍艦9隻撃沈=トランプ氏

ワールド

原油10%急騰、イラン攻撃受け 100ドル超の予想

ワールド

米国民の43%がイラン攻撃「支持せず」=ロイター/

ワールド

対イラン軍事作戦、全ての目標達成まで継続へ トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作曲家が「惨めでもいいじゃないか」と語る理由
  • 4
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 5
    「本当にテイラー?」「メイクの力が大きい...」テイ…
  • 6
    【銘柄】「三菱重工業」の株価上昇はどこまで続く...…
  • 7
    【銘柄】「ファナック」は新時代の主役か...フィジカ…
  • 8
    米・イスラエルの「イラン攻撃」受け、航空各社が中…
  • 9
    「高市大勝」に中国人が見せた意外な反応
  • 10
    今度は「グリンダが主人公」...『ウィキッド』後編の…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 7
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中