最新記事

全米騒乱

全米暴動、トランプは米軍を投入するのか

Trump Has Military Poised to Intervene, Whether Governors Want It Or Not

2020年6月2日(火)18時05分
ウィリアム・アーキン

プライド月間の6月、2015年(オバマ大統領時代)には虹色にライトアップされたホワイトハウスだが


トランプは、デモ開始当初から、米軍を使うことを考えていたようだ。5月28日、黒人男性が警官による暴行の後に死亡し、デモの発火点となったミネソタ州のティム・ウォルツ知事が州兵の動員を決定すると、トランプは「米軍は常に全面的に支援する」とウォルツに言ったとツイートしている。暴力賛美だとしてツイッター社が警告と付けて有名になったフレーズも、この投稿にあった。「われわれは事態を掌握するだろうが、略奪が始まったら発砲が始まる」

州兵の動員にあたってウォルツは、州兵は「警察ではない」と強調した。だがミネソタ州兵の司令官であるジョン・ジェンセン少将は、州兵たちはFBIから「確かな脅威を示す情報」を得ており、武装していると語った。ジェンセンは、武装した州兵たちに法の執行権限がある訳ではないとしつつも、現場の司令官たちには「自衛権がある」と語った。

米国内での作戦に関する兵力使用規定(SRUF:機密扱い)によれば、「司令官には、敵対的な行為や意思表示を受けた場合、周辺の部隊も含め、危険に陥った部隊の自衛権を行使する権利と義務がある」とある。

国内での軍事力の行使は(各州知事の管轄下にある州兵であっても)一触即発の危険性を秘めているため、SRUFは海外での戦闘活動に適用される交戦規定(ROE)よりもずっと制約が厳しい。NORTHCOMの高官によれば、今回の暴動についてのSRUFと準備命令には、「武力は最後の手段としてのみ使用すること」と明記されている。

「反乱法」の発動なるか

ウォルツ知事は5月30日までに、ミネソタの州兵1万3200人を総動員することを承認した。同日夜にはミネアポリスやセントポールの市街地に、催涙ガスなどが使われた場合に備えてガスマスクを着用した州兵たちが配備された。

30日夜までには、アリゾナ、カリフォルニア、ジョージア、インディアナ、ケンタッキー、ネバダ、オレゴン、テネシー、ユタなどの各州でも激しいデモが勃発。各州でさらなる州兵の動員が決定された。州兵たちはそのほぼ全ての州で、政府関連の建物を守りつつ「秩序を回復し、器物損壊をできる限り食い止める」任務を課されている。

5月31日朝までに、ミネソタの州兵は5025人が配置に就き、「すぐに1万800人まで増やしていく」予定だと発表。ジョージア州は3000人を動員する予定を明らかにした。

米国防総省は、現段階では各州から連邦軍の派遣について「要請」はないと主張している。だがもしトランプが、めったに使われたことのない1807年の反乱法を発動するか、州兵の司令官たちが危険を感じて自衛権を行使すれば、州知事の意向が通らなくなる可能性もある。

(翻訳:森美歩)

20200609issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

木原官房長官、撤回指示など明言せず 官邸幹部の「核

ワールド

NZ企業信頼感、12月は30年ぶり高水準 見通し指

ワールド

TikTok米事業、売却契約を締結 投資家主導の企

ビジネス

英消費者信頼感指数、12月は再び今年最高 増税回避
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中