最新記事

感染症

米、新型コロナ第2波懸念強まる 一部で感染者・入院者が急増し医療ひっ迫 

2020年6月12日(金)10時51分

米国ではテキサス、アリゾナを含む一部少数の州で新型コロナウイルス感染症による入院者数が足元で急増、米経済の再開が感染の第2波を引き起こすとの懸念が強まっている。写真はワシントンで5月撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

米国ではテキサス、アリゾナを含む一部少数の州で新型コロナウイルス感染症による入院者数が足元で急増、米経済の再開が感染の第2波を引き起こすとの懸念が強まっている。

新型コロナの感染再拡大が懸念される中、11日の世界の株式市場は最近の力強い上昇から一転、大幅下落となった。米主要株価指数のS&P総合500種とダウ工業株30種はともに、国内で感染者が急増し始めた3月以来の大幅な下げを演じた。

米国の一部の州で新型コロナ新規感染者が急増している原因の1つは、検査の拡充だ。ただ、その大半では同時に入院者数が増えており、集中治療室(ICU)の病床が足りなくなりつつある州も出ている。

テキサス州は、入院者数が3日連続で過去最多となった。ノースカロライナ州ではICUのベッドの空きは全体のわずか13%となっている。テキサス州ヒューストンの市長は、必要となれば市内にあるプロフットボールNFLのスタジアムを臨時病院に転用する考えを示した。

アリゾナ州の入院者数は、過去最多の1291人に上る。州保健当局は今週、各病院にICUの収容能力を引き上げるよう要請した。同州のウェブサイトによると、ICUのベッド数の約4分の3が既に埋まっている。

ワシントン大学の疫学者、ジャレッド・ベーテン氏は「アリゾナは新たな局面に差しかかっている」と指摘。「感染者数が既にピークを付け、減少傾向にある地域で再び増加が始まれば警戒を呼ぶことになるだろう」とし、ニューヨークなどの州に言及した。

保健専門家らは、全米で繰り広げられている人種差別や警察の暴力に抗議するデモが原因で感染が拡大する可能性を懸念している。

週間の新規感染者4割増の州も

ロイターの集計によると、アリゾナ、ユタ、ニューメキシコの各州は、6月7日終了週の新型コロナ新規感染者数が前週比40%以上急増した。フロリダ、アーカンソー、サウスカロライナ、ノースカロライナの各州の増加率は30%以上だった。

米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長はカナダ放送協会(CBC)のニュース番組で、行動制限の解除により感染者が増えるのは必至だと述べた。

テキサス大学の研究員、スペンサー・フォックス氏は、医療崩壊の状態になくても、入院者が増えれば今後、死者数は増えると見込まれるとした。

「米国の都市や州、そして世界中で新型コロナ流行の方向性について憂慮すべき兆候が見られ始めている」と述べ、迅速な対策が必要になっているとした。

ハーバード・グローバル・ヘルス研究所のディレクター、アシシュ・ジャー氏はCNNのインタビューで、新型コロナ感染症による米国の死者は9月のいずれかの時点で20万人に達するとの予想を示した。現在の死者数は11万3000人強で、世界で最も多い。

同氏は、米国が先進国で唯一、感染率が制御可能な水準に低下する前に経済活動を再開させたと指摘した。

保健当局者らは、公共の場でのマスク着用と一定の対人距離の確保が感染リスクを大幅に低下させると訴えてきたが、米国の多くの州はマスク着用を勧告していない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ禍、それでも中国から工場は戻ってこない
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・ロンドンより東京の方が、新型コロナ拡大の条件は揃っているはずだった
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...


20200616issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中