最新記事

米中関係

国連安保理「新型コロナ下での停戦」決議できず WHOめぐる米中対立が影響

2020年5月17日(日)11時43分

新型コロナウイルスとの戦いに集中するため、世界に停戦を呼びかける国連安全保障理事会の試みが行き詰まっている。写真は米ニューヨークの国連本部。3月10日撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

新型コロナウイルスとの戦いに集中するため、世界に停戦を呼びかける国連安全保障理事会の試みが行き詰まっている。決議案の中で世界保健機関(WHO)にどう言及するか、米中が火花を散らしているためだ。14日にエストニアとドイツが代替案を示したものの、中国が難色を示してまとまらなかった。

常任理事国5カ国と非常任理事国10カ国で構成される安保理はこれまで7週間、決議案の調整を続けてきた。新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、国連のグテレス事務総長が3月23日に世界に向けて呼びかけた「即時停戦」に、効力を与えるためだ。

フランスとチュニジアが先週提示した決議案を巡る審議では、WHOへの支持を呼び掛ける文言を入れるかどうかで、中国と米国が対立。米国はWHOに言及したがらない一方、中国はこの文言を含めるよう主張した。

そこで12日、エストニアとドイツが安保理に新たな草案を提示。グテレス事務総長を支持し、人道上の観点から紛争を90日間停止するよう世界に呼びかけることに焦点を当てたものだ。WHOには触れなかった。

「われわれが欲しいのは停戦を表明する決議だ」と、米国の国連大使ケリー・クラフト氏は14日、ノースカロライナ大学チャペルヒル校政治学研究所とのオンライン会議で語り、ドイツとエストニア案への賛意をほのめかした。

「どの国がその決議を提示したかは問題ではない。重要なのは焦点が絞られたことで、停戦について言及していること、そして最も必要としている人々に人道支援が確実に届くようにすることだ」

一方、中国の外交官は匿名を条件に、WHOへ婉曲的に言及するフランスとチュニジアの決議案について、「理事国から圧倒的な支持を得ている。前進させるための最善の案だ」と述べた。「ドイツとエストニアの案を採択する可能性はない」という。

フランスとチュニジアが提示した案は、WHOの名前は挙げず、「専門的な保健衛生機関」との表現を盛り込んでいた。そのような機関はWHO以外にはない。

この案でまとまるかにみえたが、複数の外交筋によると、米政府がこれを拒否した。中国側はこの案で妥協しようとしたと、前出の外交官は話す。

世界の平和と安全保障に責任を負う安保理に、新型コロナウイルス自体への対処でできることはあまりない。しかし、外交官や専門家は、グテレス事務総長が呼び掛けた停戦を安保理が支持することで、世界を結束させることができると指摘する。


Michelle Nichols

[ニューヨークロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・日本の「生ぬるい」新型コロナ対応がうまくいっている不思議
・東京都、新型コロナウイルス新規感染9人 54日ぶりにひと桁台に減少
・ニューヨークと東京では「医療崩壊」の実態が全く違う
・緊急事態宣言、全国39県で解除 東京など8都道府県も可能なら21日に解除=安倍首相


20050519issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月19日号(5月12日発売)は「リモートワークの理想と現実」特集。快適性・安全性・効率性を高める方法は? 新型コロナで実現した「理想の働き方」はこのまま一気に普及するのか? 在宅勤務「先進国」アメリカからの最新報告。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、自身のSNSに投稿された人種差別

ビジネス

アングル:インド「高級水」市場が急成長、富裕層にブ

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、リスク資産反発受け 円は衆

ワールド

トランプ氏、インドへの25%追加関税撤廃 ロ産石油
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南山」、そして「ヘル・コリア」ツアーへ
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 7
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 10
    「こんなのアリ?」飛行機のファーストクラスで「巨…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中