最新記事

インドネシア

中国請負の高速鉄道建設が工期遅延に予算超過 インドネシア、入札に敗れた日本の参加要望

2020年5月30日(土)20時46分
大塚智彦(PanAsiaNews)

また別に会見したエリック・トヒル国営企業相も「中国主体のコンソーシアムによる高速鉄道計画はジャカルタからバンドンまでだが、政府は日本との間でジャカルタから東ジャワ州の州都スラバヤまでの鉄道高速化計画を進めており、この鉄道2路線の国家戦略プロジェクトを一本化して、ジャカルタからバンドンを経由してスラバヤとを結ぶ一つの鉄道計画として今後進めたいというのがジョコ・ウィドド大統領の思惑だ」と明らかにした。

さらにエリック国営企業相は大幅に遅れているジャカルタ=バンドン間の高速鉄道建設計画は日本が参加することによって今後順調に進むとの見通しから「2022年9月までの完工を目指したい」との希望的観測を明らかにした。

この閣議でのジョコ・ウィドド大統領の方針は正式には日本側にはまだ伝えられていないが、2019年9月に日本とインドネシアが合意に達した在来線の高速化計画ではジャカルタからスラバヤまでジャワ島北部海岸沿いを走る在来線を改良して高速化し、約350キロ間を現在の3時間から大幅に短縮する予定となっている。

日本参加の実現の可能性は?

しかし今回のインドネシア側が目指す1本化案になるとジャカルタからジャワ島の高原都市でもあるバンドンを経由してスラバヤに向かう路線となるため、大幅な路線変更となる可能性がでてくる。

加えて中国とインドネシアの企業体が請け負っているバンドンまでの工区での建設が順調に進んでいないことから、この工区を今後これまで通りの中国主体で進めるのか、日本側も参画することになるのかが現時点では判然としていない。

鉄道建設の専門家などによると、バンドンまでの工区にはすでに完成したトンネルも多く、日本側が工事に関与した場合、日本が求める安全基準が満たされたトンネルや線路かどうかを再確認する必要が生じる可能性もあるとして「鉄道に関しては安全を最優先する日本の参加でインドネシア側が企図する早期完工に単純に結びつくかどうかは不透明」との見方を示している。

また今回のインドネシア側の「一方的な方針変更」を報道で知ったという日本の関係者は、2015年の入札の際の経緯を念頭に「まだなんの具体的アプローチはインドネシア側からはないが、過去の経緯からして、はいそうですか、とすんなりと行くことは難しいのではないだろうか」と話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中