最新記事

中国

感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか──モスクワ便り

2020年5月15日(金)08時16分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

プーチン大統領と習近平国家主席――中露蜜月か?(2019年11月13日、ブラジル開催のBRICSサミットにて) Sputnik/Ramil Sitdikov/Kremlin via REUTERS

未曽有の被害を人類にもたらしているコロナ災禍に対して西側諸国は、中国に賠償を求めるべく対中包囲網を強化している。蜜月の中露はどう対応するかを、プーチン側近とも接触のある「モスクワの友人」に聞いた。

対中包囲網を強化する西側諸国

今年4月29日、フランスのFRI(Radio France Internationale、ラジオ・フランス・アンテルナショナル、フランス国際ラジオ)は、<コロナに対して世界8か国が中国に100兆ドルの損害賠償を求めている 中国激怒>と報道した。それによれば、4月29日までの時点で訴えているのは「アメリカ、イギリス、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリア」の8ヵ国で、賠償金額の合計は100兆ドル(約1京1000兆円)を上回り、中国の7年間分のGDPに相当する額に達するという。

RFIの報道は香港の「香港経済日報」に基づくと書いてあるが、香港経済日報では4月28日の<【グローバル損害賠償】トランプが再び中国の損害賠償を求めると発言>や、4月29日の<【グローバル損害賠償】「百ヵ国聯軍」いざ、戦闘か? 中国は頭上に突き付けられた三枚刃を某業しなければならない>などがあるが、金額などは書いていない。したがって賠償額に関してはFRIが計算したものと思う。

もっとも、興味深いのは4月30日の香港経済日報の<「8ヵ国聯合」対中賠償請求全開 習近平「西巡講話」に隠された対応策は?>という記事で、これは清王朝末期の「8国聯合」をもじって、現在対中包囲網が形成されていることを表している。

この訴訟に関しては中国問題グローバル研究所にも「原告に名前を連ねないか」と誘いが来たので、殊のほか強い興味を抱く。

今回の原告はアメリカの州の検察当局もあるが、弁護士会や民間シンクタンクが多く、トランプが言っているような、「国家」として訴えるところまでは行っていない。

「国家」が「国家」を訴える場合は、(海洋問題を別とすれば)以下のようなケースがあり得る。

一つはオランダのハーグにある常設仲裁裁判所で、これは相手国が「訴訟を受けて立つ」と承認しなくとも、一方的に訴えることができる。但し執行の強制力を持っていない。したがって南シナ海の領有権を巡ってフィリピンが訴訟を起こし勝訴したのに、中国は判決文を「一枚の紙っ切れでしかない」と強烈に走り回って無視してしまったことがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中