最新記事

新型コロナウイルス

緩むとこうなる?制限緩和を試みた韓国にコロナのしっぺ返し

South Korea Tries a Tentative Reopening—and Pays for It

2020年5月12日(火)19時38分
モーテン・ソンダーガード・ラーセン

この集団感染を受けて、政府は学校の再開を1週間延期。多くの当局者から、政府の当初の再開方針に無理があったのではないかという声が上がっている。

韓国保健福祉部のソン・ヨンレ報道官は、「このところニューノーマル(新常態)という言葉がよく使われている。新型コロナウイルス後の韓国がどうなっていくのか、我々も強い関心を持って見守っている」と外国メディア向けの会見で語った。

韓国政府は、ウイルス流行の第2波に向けた備えも万端だとしている。韓国疾病予防管理局の權俊旭副部長は5月7日の会見で、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の第2波をより効率よく抑えることが重要だ」と語った。「韓国政府は、第2波に向けての備えを進めており、日常生活を続けながら感染拡大を抑えることを目指している」

今回の梨泰院地区での集団感染を受けても、当局者たちは、韓国のウイルス対策は総じてうまくいっていると主張する。「最近では、1日あたりの新たな感染者が10人を大きく割り込んでいる。その半数以上が海外からの入国者で、感染経路が不明なケースは5%程度だ」と保健福祉部のソンは語った。「このことは、我々がCOVID-19を制御していることを意味する。今後も感染者をこの水準に抑え、一方で元の生活に戻るための活動ペースを上げていけると考えている」

感染者3日連続ゼロも

韓国は、最近の集団感染による増加分を除けば、もう1カ月近くにわたって1日あたりの新たな感染者数を10人程度に抑えることができており、5月に入ってから3日連続で国内感染者ゼロを記録した。

ある専門家は、経済が大打撃を受け、学校は既に1学期の半分が過ぎ、気候が良くなってきている今こそ、市民に活動の再開を促すべき絶好のタイミングだと指摘する。「ウイルスは高温多湿の気候に弱い。夏はみんな屋内よりも屋外で過ごすことが多く、このところの新たな感染者の数は、これまでで最も少ない水準にある。こうした条件を合わせて考えると、いま規制を緩和するのは適切だ」と、高麗大学九老病院の金宇柱教授(感染症)はフォーリン・ポリシー誌に語った。

一方で彼は、完全な規制解除はまだ早いとも警告した。「韓国は感染拡大がぶり返すことがないように、慎重な対応を取るべきだ。政府はあらゆる状況や再発リスクを評価しつつ段階的に規制を解除し、もし感染拡大の兆しが見えたら直ちに大規模なソーシャル・ディスタンシングの措置に立ち戻る必要がある」

特に、再び気温が下がって多くの人が密閉された屋内で過ごすようになる秋には、感染拡大の再発リスクが高くなる。「効果的なワクチンや集団免疫がなければ、秋に大きな第2波が訪れることは避けられないだろう」と金は指摘した。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中