最新記事

中国

ローテク日本が休校・休業コロナ対策を困難に

2020年5月5日(火)21時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

私事で恐縮だが、中国問題グローバル研究所はまさに執務室のないシンクタンクで、ネットとメールによって関係各国のトップクラスの研究者とつながり中国問題を多角的に研究しているプラットホームだ。その意味では、ベネシュ氏の日本への要望に合致しているのかもしれない。

日本は遠隔教育(オンライン授業)後進国:コロナ休校の教育欠落と9月入学

2月27日、安倍首相は何の前触れもなく突如、全国すべての小中高、特別支援学校を対象に3月2日から春休みまで臨時休校を行うよう要請した。それは「ヒステリックなほどの突然」で、日本国中がパニックに陥ったことは記憶に新しい。

あまりに不評だったので、今度は一転「専門家の意見に従い」という理由を付けて「臨時休校解除」を3月20日に宣言した。

一般に「3月の3連休期間(3月20日~22日)があったために全国の1日当たりの新規感染者数が3.5倍に急増した」として、感染者急増を「3月連休のせい」にする傾向にあるが、果たしてそうだろうか?

3月20日に安倍首相が突然「臨時休校は解除します!」と言ったわけだから、休校で緊張していた親子が一斉に「コロナから解放されたぞ――!」という解放感に押されて外に飛び出していったせいではないのか?

休校指示も休校解除も、右往左往しながら全く無計画に動いているのが安倍政権だが、もっと無計画なのは「休校期間に学校教育をどうするか」に関する指示も政策もないということで、これは医療崩壊同様、絶望的な日本の現状というほかない。

緊急事態宣言で休校を余儀なくされた教育現場は、いっそのこと「9月入学」への切り替えを模索しているが、その間の授業の欠落をどうするのか。

中国では1月23日の武漢封鎖と同時にオンライン授業に切り替えている。日本は9月入学論まで出ているのに、オンライン授業に対する安倍内閣の指示は全くない。

OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、学校教育現場でのICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)機器活用に関して、日本はほぼOECD加盟国の中で最下位に属するくらいに遅れている。オンライン授業実現に関して激しいまでの後進国なのである。

以下に示すのはOECD生徒の学習到達度調査(PISA=Programme for International Student Assessment)の2018年調査補足資料「生徒の学校・学校外におけるICT利用」の調査結果だ。PISAは参加国が共同で国際的に開発し、15歳児を対象としている。

リンク先をご覧いただければ見ることができるのだが、何枚かの注目すべき図表を選んで貼り付ける。図の番号はリンク先の番号のままとする。「国語、数学、理科、外国語、美術」を選んでみた。他にもオンライン授業化に困難をきたす保健体育や音楽などがあるが、何れも日本は最下位。保健体育や音楽などの図表に関してはページを取り過ぎるので省略した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中関係の「マイナス要因」なお蓄積と中国外相、米国

ビジネス

デンソーの今期営業益予想87%増、政策保有株は全株

ワールド

トランプ氏、大学生のガザ攻撃反対は「とてつもないヘ

ビジネス

米メルク、通期業績予想を上方修正 抗がん剤キイト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中