最新記事

ウイルス

韓国そして中国でも「再陽性」増加 新型コロナウイルス、SARSにない未知の特性

2020年4月29日(水)17時49分

陰性確認後にウイルスが「再活性化」?

韓国疾病予防管理センター(KCDC)のディレクターを務めるジョン・ユンキョン氏は、すでにウイルスが体内から消えたと思われた後に再陽性と判定された韓国人患者91人について、ウイルスが「再活性化」した可能性がある、と述べている。

韓国・中国の別の専門家らは、ウイルスの残滓(ざんし)は患者の身体に残るものの、宿主や他の人間に対する危険性・感染性は持っていない可能性がある、と述べている。

こうした再陽性患者について、基礎疾患の有無などの詳細はほとんど開示されていない。

英イーストアングリア大学ノリッジ・スクール・オブ・メディシンのポール・ハンター教授は、ノロウイルスやインフルエンザなど他のウイルスの場合、免疫機能が低下している患者において消滅が異常に遅くなる事例が過去に見られた、と指摘する。

韓国当局は2015年、リンパ腫の基礎疾患がある中東呼吸器症候群(MERS)患者で、ウイルスが116日間体内に残っていた例を発表した。免疫機能の低下により、身体がウイルスを排出できていなかったという。この患者は最終的に、リンパ腫により死亡した。

中南病院のユアン副院長は、患者の体内で抗体ができても、ウイルスが消滅したことを保証するわけではない、と言う。

同氏によれば、一部の患者では、抗体レベルが高くても核酸増幅検査で陽性と判定されているという。

「つまり、抗体とウイルスがまだ戦いを続けているということだ」とユアン副院長は言う。

精神的苦痛、自殺願望も

武漢の例に見られるように、まるで際限なく繰り返されるかのように陽性判定が続く人にとって、新型コロナウイルスは精神的にも重荷となってのしかかっている。

心理カウンセラーのデュさんは、武漢での感染拡大が始まったとき、心理療法のホットラインを開設した。彼女は4月初め、郊外の隔離センターを訪問する際に、ロイターの記者の同行を認めてくれた。患者の身元をいっさい明かさないことが条件だ。

ある男性は、この隔離センターの1室に移送される前に入院した3カ所の病院名をスラスラと挙げた。彼は2月第3週以来、10回以上の検査を受けており、時には陰性もあったが、たいていは陽性の判定だったという。

「体調はいいし、何の症状もない。だが検査をいくら繰り返しても陽性になる」と男性は言う。「いったいこのウイルスはどうなっているのか」

患者はこの隔離センターに少なくとも24日間留まらなければならず、陰性判定を2回もらわなければ解放されない。患者はそれぞれ個室に隔離されており、彼らの話では、費用は政府持ちだという。

隔離センターを訪問するデュさんが直面した最も憂慮すべきケースが、冒頭のマホガニー製のドアの向こうにいた男性である。彼はその前夜、医療スタッフに自殺願望を語ったという。

この男性は「頭が混乱していた」とデュさんに語り、いくつもの病院で数限りないCTスキャンや核酸増幅検査を受けてきたこと、そのなかには陰性判定もあったことを説明した。

これほど長く離ればなれになってしまったせいで孫が寂しがっている、と男性は語った。自分の状況からすると、もう二度と孫には会えないのではないかと懸念しているという。

そこまで話すと、男性は再び涙に暮れた。「どうして私がこんな目に」

Brenda Goh

(翻訳:エァクレーレン)

[武漢(中国) ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・欠陥マスクとマスク不足と中国政府
・ベルギーの死亡率が世界一高いといわれる理由、ポルトガルが低い理由......
・東京都、新型コロナウイルス新規感染が112人確認 都内合計4000人を突破
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(28日現在)


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 9
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中