最新記事

感染症対策

軽症者自宅待機の危険性、アメリカ医師会論文が警鐘

2020年4月24日(金)19時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

以下の図をご覧いただきたい。

Endo200424_data.jpg

この図は論文が描いたコロナ感染者数と軽症者の扱いにフォーカスを絞った考察である。

本来ならフーリエ変換やラプラス変換などをして大型プログラムを組めば「相関関数」が出て来るし、かつて数理統計学的に分子動力学の相関関数のコンピュータ・シミュレーションに燃えた経験のある筆者としては非常に興味をそそられるところだが、まあ、生データがあるわけでもないし、そのような体力が残っているわけでもないので、ここではあくまでも論文での分類に従って解説することとしよう(論文執筆者の中には純粋な数理統計学者も入っている)。

説明しやすいように、論文で描かれている図に、筆者が独自に「1」~「5」の番号を記入した。加筆したのはサーモンピンクの数字のみである。他は論文通り。

1.第1段階(Start of the Chunyun period)

2020年1月10日以前の春節の大移動(Chunyun、春運=春節運送)を第1段階とした。この時期、コロナに特化した介入(政府の対策)が何も行われていない。

2.第2段階(Announcement of human-to-human transmission)

第2段階は、大規模な人口移動が発生し、コロナの伝播を加速させると予想された2020年1月10日から22日の春節期で、1月20日に医療従事者の間における「人から人への感染」が公表された。(筆者注:これはこれまでのコラムで何度も書いてきたように、1月19日に鍾南山が武漢協和医院に行き、「人-人」感染があると直感して北京に戻り李克強に報告して、1月20日に習近平の「重要指示」が出されてことを指しているものと思う。科学的論文なので、その辺の政治的動きを一切省略したのだろう。)

この段階においては、強力な公衆衛生上の介入を行っておらず、病院は発熱や呼吸器症状のある患者で過密状態になり始めた(→医療崩壊に近づいた)。

この段階で感染者はひたすら増え続けている。

3.第3段階(Start of Wuhan cordons sanitaire=武漢封鎖開始)

1月23日に武漢封鎖が始まった。第3段階は「1月23日から2月1日までの間」で、自治体はまず市内からの交通機関を封鎖し、その後、公共交通機関の運行を停止し、市内の車両の通行を全面的に禁止した。また、公共の場でのマスク着用の義務化や懇親会の中止など、社会的距離を縮めるための措置がとられた。この時期は医療資源が不足していたため、確定・推定患者の多くがタイムリーな診断・治療を受けることができず、自宅での自己隔離を余儀なくされた。

特に2月1日に急増しているのは、確定患者であるか否かに関する判断基準を変えたからである。湖北省におけるPCR検査キットが不足したので、CTスキャンで胸に影がありコロナに相当する症状がある者は「とりあえず陽性」扱いとして入院治療するようにしたからである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化

ビジネス

デジタルユーロ、大規模な混乱に備え必要=チポローネ

ビジネス

スウェーデン、食品の付加価値税を半減へ 景気刺激へ

ワールド

アングル:中ロとの連帯示すインド、冷え込むトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中