最新記事

医療

医療崩壊に備えてカリフォルニア州が発表した命の優先基準

CA Prepares 'Worst-Case' Coronavirus Guidelines to Prioritize Patients

2020年4月23日(木)16時50分
ダニエル・ビジャレアル

ベッドや人工呼吸器が不足すれば、誰かが最悪の選択を迫られることになる(写真は、パリ近郊の病院の集中治療室) Gonzalo Fuentes-REUTERS

<感染者が増え過ぎて医療現場が対応しきれなくなった場合に誰の命を優先的に救うべきかの指針>

米カリフォルニア州の公衆衛生局は、新型コロナウイルスの感染者が再び増加して同州が医療崩壊の危機に直面した場合、「どの患者を優先的に救うべきか」の指針を38ページの文書にまとめて発表した。

文書には、大勢の患者が一気に病院に押し寄せた場合、医療従事者たちが迫られる辛い選択を列挙している。患者の増加に伴ってベッドや人工呼吸器、防護服などの医療資源が足りなくなった時、いかにして命を振り分けるのか。

同公衆衛生局は各病院に、患者の優先度を判断するためのチームを作ることを推奨する。その上で、医療従事者が決断を迫られた時の基準を挙げる。患者の年齢、重症度、治療しても回復の妨げとなり得る基礎疾患があるか否か──。またウイルスとの戦いに「不可欠な」医療従事者や救急隊員が、ほかの患者より優先的に治療するべき場合もあると示唆している。

命の「優先度スコア」

医療資源が限られるなか、回復が見込めない患者には緩和ケアを行い、死期を延ばすだけにならないよう留意しつつ、症状を最小限に抑えることに集中すべきだとも述べている。

人工呼吸器が足りなくなった場合には、患者に「優先度スコア」をつけて判断を下す。このスコアは1~8点の8段階評価で、救えない場合が多い基礎疾患があるかどうか、などを考慮して決定する。スコアが低いほど治療の優先度は高い。

ロサンゼルス・タイムズ紙の試算では、ある程度進行したアルツハイマー病や慢性的な肺疾患のように「生命を脅かす重大な持病」がある患者は、2ポイントの加算になる可能性があり、これらの病気の症状がさらに重い場合には、それが4ポイントに増える可能性がある。

スコアが同点の場合は、より若い患者が優先される。

カリフォルニア州公衆衛生局は過去数週間にわたって複数の研究結果を検証し、病院や医師、医療関連団体と話し合った上で、今回の文書を作成したということだ。ミネソタ州とコロラド州の保健当局も同様のガイドラインを発表している。

<参考記事>「恐怖の未来が見えた」NYの医師「医療崩壊」前夜を記す日記
<参考記事>日本で医療崩壊は起きるのか? 欧米の事例とデータに基づき緊急提言

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

現代自、米国生産を拡大へ 関税影響で利益率目標引き

ワールド

仏で緊縮財政抗議で大規模スト、80万人参加か 学校
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中