最新記事

韓国社会

元KARAク・ハラ、死後に噴き出した韓国の闇──遺産争い・N番部屋・女性嫌悪

2020年4月14日(火)20時10分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ク・ハラをめぐるもう一つの事件──リベンジポルノ

そもそも、ク・ハラが自殺に至った大きな理由とされているのが「リベンジポルノ問題」だった。ク・ハラの元恋人チェ・ジェボム容疑者は、脅迫や障害の罪と本人の同意なしに性的動画を不法撮影した罪で昨年1月に起訴されている。

その後、この事件は韓国のフェミニズム意識の高まりとともに注目度も上がっていき、女性の盗撮被害やリベンジポルノという言葉もニュースなどでよく取り上げられるようになった。

そんななか、8月にはチェ容疑者に対する第1審判決が言い渡されたのだが、盗撮についてはなんと無罪となった。当時の担当判事オ・ドクシクは、無罪の理由を「動画は本人の意思に反して撮影されたわけではない」と言い、その他の障害や脅迫についても懲役1年執行猶予3年という極めて軽い判決結果を下した。

また、裁判中この動画に関して、ク・ハラは視聴をしないで欲しいと訴えていたが、オ・ドクシクは見たことを明かしており、これについてセカンドレイプだとの激しい非難を受けた。

その後、ク・ハラは自らの命を絶ってしまったが、もちろん裁判は続行されており、最終判決がこの5月21日に出ることが確定した。彼女のファンはもちろん、多くの女性団体もこの事件の行方を見守っている。

韓国を震撼させた「n番部屋」にもオ・ドクシクが

ところで、この判事オ・ドクシクだが、今また世間を騒がせている。それは、ク・ハラとは別に、あのN番部屋事件の担当判事としてだ。

先月17日、韓国で衝撃の「N番部屋事件」が発覚した。SNSアプリTelegramを使い、女性を脅迫しながら性的動画を撮影させ、それを有料会員に共有していたという卑劣極まりない手口に韓国中の人が驚愕し、怒りに震えた。被害者には未成年者も含まれ、シェアされていた動画には児童ポルノや集団レイプなど猟奇的な内容も多く、閲覧していた会員はなんと数十万人を超えるという。

首謀者「博士」ことチョ・ジュビン容疑者は捕まり、警察での捜査が今も続けられているが、そのチョ・ジュビンとTelegram内で対立し、その後独立して8千から2万人の有料会員相手に動画を提供していた別のチャットルームの管理人「太平洋」も逮捕された。

彼はなんと16歳で、未成年のために身元非公開とされている。この「太平洋」の担当裁判官がク・ハラのリベンジポルノ事件と同じオ・ドクシクと発表され、またしても男性有利な判決を下すのではないかと批判を浴びた。

さっそく韓国女性団体連合は、3月27日裁判所へオ・ドクシクではない別の裁判官への交代を要求。また大統領府のホームページにある国民請願の掲示板にも、オ・ドクシクを交代させるよう求める訴えが投稿され、あっという間に40万人が賛同の署名をした。最終的に3月30日ソウル中央地裁はオ・ドクシクを担当から交代することを発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 9
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中