最新記事

感染症対策

パンデミックの拡大局面変えるか 新型コロナウイルス抗体検査に希望の光

2020年3月31日(火)09時22分

免疫は数カ月か

抗体検査の可能性が前面に出てくる一方で、トランプ米大統領は今後数週間のうちに、人が集まる機会を減らす「ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)」と「自宅待機」の勧告を緩和することを検討している。トランプ大統領支持派のあいだでは、こうした政策は米国経済に与える打撃が大きすぎると主張している。米国民の約半数が自宅待機を命じられており、多くの学校・企業が期間を定めずに閉鎖中だ。

24日、トランプ大統領は「復活祭(イースター)までには米国経済を再開したい」と述べた。

だが、さらなる感染拡大を引き起こす恐れなしに各種機関や企業の活動を再開することは難しい。国内の大半の地域で、新型コロを診断するための検査が不十分だからだ。

23日、ホワイトハウスの新型コロナウィルス対策特別チームのデボラ・バークス博士は、指先から血液を採取するシンプルな抗体検査が重要な役割を果たす可能性があり、連邦政府はCDC版の抗体検査の完成を待つつもりはない、と述べた。

バークス博士は23日のホワイトハウスにおける記者会見で、「すでに開発されたものもいくつかある。シンガポールで使われているものにも注目している」と述べた、「品質を非常に重視している。偽陽性は好ましくない」

この場合の「偽陽性」とは、実際には免疫がないのに「ある」という結論に至りかねない誤判定を言う。

「ストレイツ・タイムズ」紙の報道によれば、米デューク大学とシンガポール国立大学(NUS)の提携によるデュークNUSメディカルスクールの研究者らは、約90%の精度を示す抗体検査を迅速に開発し、その後、さらに信頼性の高い高度なバージョンを導入したという。

感染症の専門家は、2003年に出現したSARS(重症急性呼吸器症候群)など他のコロナウィルスに関する研究を参考に、COVID-19に対する免疫は数ヶ月、あるいは1年以上維持されるのではないかと話している。ただし彼らは、COVID-19に関して免疫がどれくらい続くのか正確に知る方法はなく、個人差もありうるだろうと警告している。

アイオワ大学教授のスタンリー・パールマン博士(微生物学・免疫学)は「数ヶ月は免疫が維持されるかもしれない」と言う。「だが正直なところ分からない。これは非常に重要な問題だ」

パールマン博士は、現在市場に登場しつつある新たな抗体検査の多くは、非常に効果的かもしれないが、研究者らはそれを裏付けるためにデータを見たがっていると話す。

「すでに感染した人を全員見つけられるくらい感度が高いことが望ましい」とパールマン博士は言う。「だが、他のコロナウィルスまで検知してしまうような手当たり次第のものは困る」

(翻訳:エァクレーレン)

Chad Terhune Allison Martell Julie Steenhuysen

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・「コロナ失業」のリスクが最も高い業種は?
・「アメリカの新型コロナウイルス死者、20万人に上る可能性も」国立感染症研究所所長
・中国、感染しても無症状者は統計に反映せず 新型コロナウイルス感染爆発「第2波」の懸念


cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット

ワールド

インドとパキスタン、停戦合意から一夜明け小康 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦闘機を撃墜する「世界初」の映像をウクライナが公開
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    指に痛みが...皮膚を破って「異物」が出てきた様子を…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中