最新記事

韓国

集団感染に警戒する韓国 日系企業駐在員は帰国もままならず

2020年3月17日(火)18時30分
佐々木和義

韓国・大邱の繁華街を消毒する韓国兵士 REUTERS/Kim Kyung-Hoon

<韓国の新型コロナウイルス感染者は減少に転じているが、集団感染が発生するなどまだ警戒を解いていない。日系企業駐在員にも大きな影響が出ている......>

韓国の新型コロナウイルスの新規感染者は2020年2月28日をピークに減少に転じたが、100人台まで落ち着いた3月10日にソウル市九老区で、また16日には京畿道城南市の教会で大量感染が見つかるなど、集団感染が発生している現状が浮き彫りになった。

韓国中央官庁で集団感染

韓国中央防疫対策本部は3月14日の会見で、韓国内の新型コロナウイルス感染者は81%が集団発生に関連があると発表している。同日0時までに確認されたおよそ8000人の感染者のうち62%に相当する5013人が新天地イエス教会と関連しており、3月10日にはソウル市九老区にある保険会社のコールセンターで集団感染が見つかった。当該ビルの勤務者82人と家族・友人33人の計115人が陽性判定を受け、また感染者が訪問した京畿道富川市(プチョン)の教会でも9人の感染が確認された。

また、3月12日までに政府の世宗庁舎で海洋水産部の18人をはじめ、保健福祉部、教育部、人事革新処など6部処で23人の感染が確認された。海洋水産部は感染者が所属する部門の職員150人を隔離し、教育部も感染者の所属部門100人とその接触者を自宅待機とした。また、食堂や記者室、各棟をつなぐ通路を閉鎖した。

事態を重く見た政府はテレワークや在宅勤務の積極的な実施を各企業や機関に勧告し、公務員の人事を管掌する韓国人事革新処も約50の中央官庁に交代制在宅勤務の実施を盛り込んだ感染防止策を通達した。

中央政府機関・公共機関の地方移転政策で建設された世宗庁舎は35の部処と15の所属機関が集まり、職員1万5000人が常駐勤務している。日本の霞が関に相当する庁舎で、部処は省庁に相当する。首都圏などから1500人以上が通勤しており、電車やバスなど多くの人と接触した可能性が指摘され、政府庁舎発の拡散が懸念されている。

駐在員が帰国した在韓日系企業は3.3%

在宅勤務は在韓日系企業にも広がっている。NNAが実施した緊急アンケートに回答を寄せた60社のうち、60%が在宅勤務を実施していた。

また、在宅勤務に続いて駐在員の一時帰国問題が浮上している。駐在員が一時帰国するリスク管理の指標に外務省の危険情報がある。外務省は2月25日、大邱市と慶尚北道の一部に感染症危険レベル2の渡航自粛勧告を発出し、3月1日にはレベル3の渡航中止勧告に引き上げた。その他の地域も2月28日にレベル1を発出し、3月6日レベル2に引き上げている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平交渉団帰国へ、ゼレンスキー氏「次の対

ワールド

ベネズエラ、麻薬犯罪組織の存在否定 米のテロ組織指

ビジネス

英予算責任局、予算案発表時に成長率予測を下方修正へ

ビジネス

独IFO業況指数、11月は予想外に低下 景気回復期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中