最新記事

医療

キューバが「奇跡の新薬」と医師ら400人を世界に派遣、新型肺炎治療を支援

Cuba Uses ‘Wonder Drug’ to Fight Coronavirus Around World.

2020年3月26日(木)17時50分
トム・オコナー

緊急支援のため一足先にイタリアのミラノに到着したキューバの医療チーム(3月22日) Daniele Mascolo-REUTERS

<「医療先進国」キューバの薬や治療を試したい15カ国からすでに打診があったが、トランプのアメリカだけは支援を拒否。対キューバ経済制裁を復活させたための意地か>

キューバは新型コロナウイルスへの有効性が期待される「奇跡の新薬」を届けるため、世界中に医療チームを派遣する。

この新薬はインターフェロン・アルファ-2Bリコンビナント(IFNrec)という抗ウイルス薬。キューバと中国の研究チームが共同で開発した。今年1月から中国で活動してきたキューバの医療チームは、COVID-19のパンデミック(世界的大流行)克服のため世界各地でこの薬を用いた治療を行う。世界全体で新型コロナウイルスの感染者は3月27日時点で累計44万人を上回り、死者は2万人を突破した(一方、回復した人も30万人を超える)。

キューバの医療チームは1980年代に先進的なインターフェロン治療でデング熱の感染拡大を阻止。その後にHIV、子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)、B型肝炎とC型肝炎のウイルスを抑える上でも成果を上げてきた。

英グラスゴー大学の講師でキューバ事情に詳しいヘレン・ヤフェによれば、IFNrecは「最終的に死に至りそうな患者の重篤化と合併症を防ぐ」と、キューバのバイオテクノロジー専門家ルイス・ヘレラ・マルティネスが説明しているという。ヤフェはこの治療法が新型コロナウイルス に対する「奇跡の新薬」になる可能性があると見ている。

<参考記事>新型コロナ致死率に各国で大きな格差──イタリアでは8.3%

制裁が足枷に

ヤフェは本誌の取材に応じ、自分が知るだけでも15カ国がこの薬を求めてキューバに接触してきたと語った。「地方自治体の長や病院の理事長も、危機に対処するため一刻も早くキューバの抗ウイルス薬を手に入れたがっている」と、ヤフェは言う。

IFNrecはCOVID-19の治療薬としてはアメリカでは認可されていないが、類似したウイルスに有効なことは証明されている。

中国のCDCに当たる国家衛生健康委員会はCOVID-19の治療薬として他の30種の薬と共にIFNrecを挙げている。世界保健機関(WHO)も今後、インターフェロン・ベータを含む4種の治療薬についてCOVID-19に対する有効性を調べる計画だ。

キューバの野心的なパンデミック対策は、米政府の長年にわたる経済制裁に足を引っ張られてきた。アメリカの制裁は「COVID-19のような大規模な公衆衛生上の危機への対応に限らず、あらゆる分野でわが国の発展を妨げる大きな障壁となっている」と、キューバの当局者は本誌に語った。「制裁解除はキューバに大きな恩恵をもたらす。医療は、約60年前に科された制裁で最も打撃を受けた部門の1つだ」

<参考記事>新型コロナ、急がれる医薬品開発──抗ウイルス薬やワクチンがなかなかできないのはなぜ?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

欧州銀行連盟、EUに規制改革要求 競争力低下を警告

ワールド

アングル:米共和党、銃団体と亀裂で選挙リスク ミネ

ビジネス

ネトフリのワーナー買収案、英政治家らが厳正審査要求

ビジネス

日銀、25年度の役員給与を改定 総裁は4.8%増の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中