最新記事

中国

新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?

2020年2月10日(月)19時11分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

「外交だから仕方がない」という言い訳ができないのは、なんとミャンマーの帰りに、近くにある雲南省の新年訪問に3日間も費やしていることだ。

1月19日から21日にかけての雲南省での「習近平のめでたい姿」を新華網でご覧いただきたい。中国新聞網にもある。また、中国チベット網には一部分動画もあり、車に乗って春節巡りをしている様子の写真もある。

いずれにしても、「めでたい」ではないか。

1月20日には新型コロナウイルス肺炎に関する「重要指示」を出しているというのに、春節巡りなどしている場合か。

それだけではない。

1月21日の雲南訪問が終わると、なんと江沢民に「春節のご挨拶」に行っている。その報道の仕方がどうも奇妙だ。

新華網の報道には「工夫」がこらしてある。

そこには「春節前夜、中共中央総書記・国家主席・中央軍事委員会主席の習近平等、党と国家の指導者たちは、それぞれ別々に(手分けして)、江沢民、胡錦涛、朱鎔基・・・・・等々の老同志に直接ご挨拶あるいは他の人に委託してご挨拶をして、老同志たちの春節の喜びを伝え、健康長寿をお祈りした」と、書いてある。

つまり、以下のことが曖昧模糊(あいまいもこ)となるように表現しているのである。

1.習近平が実際に江沢民に会いに行ったのか、それとも他の関係者に委託して習近平の代わりにご挨拶に行ってもらったのかが分からない。

2.江沢民は日ごろ上海にいるが、果たして習近平は雲南の帰路に上海に立ち寄ったのか、それとも江沢民が「偶然」北京にいたのか分からない。したがって習近平が直接、江沢民にご挨拶に行ったとしても、北京で会ったのか上海で会ったのかは不明。

何れにしても、「1月20日に習近平国家主席の名において重要指示を発布した」というのに、21日には江沢民など「老同志」に春節のご挨拶をトップ指導層が一斉にやったということは確かだ。

そんなことをしている場合ではないだろう。

ここに書いた情報は、その内削除されるかもしれないので、興味のある方は、ここまでの中国側のリンク先はダウンロードしておいた方がいいかもしれない。

ご参考までにミャンマーにおける習近平の姿はこちらで見ることができる。これも削除候補になるかもしれない。

「重要指示」はいかにして出されたのか?

だとすれば、「重要指示」は、どのようにして出されたのだろうか?

習近平がいない「北京の留守」を守っていた李克強は、孫春蘭国務院副総理(健康衛生や教育、体育などを担当)、国家衛生健康委員会あるいは国家疾病センターなどとしっかりタイアップして武漢の原因不明の肺炎の推移を観察していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、ホワイトハウス夕食会に出席 トランプ氏と

ビジネス

米エクソン、ルクオイルの海外資産買収を検討=関係筋

ワールド

トランプ氏、記者殺害でサウジ皇太子を擁護 F35戦

ビジネス

ワーナー、買収案1株30 ドルに上げ要求 パラマウ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中