最新記事

ジェンダー

性暴力から逃れてイギリスにきた女性の3分の1がまた襲われる

Asylum-seeking Women Abused Again While Destitute in Britain

2020年2月13日(木)16時49分
シャンタル・ダシルバ

イーブリンは「6年間住む場所も与えられず、何の支援も受けられなかった」という。「(路上生活は)とても辛かった」

たまたま知り合った男が自分の家に住めばいいと言ってくれたので、藁にもすがる思いで同居したという。「男はセックスを強い、私を奴隷のように扱って虐待した。逃げ出したかったが、生きるためには耐えるしかなかった」

そのうちにイーブリンは妊娠した。「酷いつわりに苦しんだが、お金がないので病院にも行けない。誰にも頼れず、とても心細かった。お金も何もないのに、どうやって子供を育てたらいいのか途方に暮れた」

イーブリンは昨年ようやく当局の窓口につながり、公的サービスを受けられることになって、最低限の生活を保障された。

「悲しいことにイーブリンのようなケースはいくらでもある」と、ドゥディアは話す。祖国で虐待されたと訴えても、信じてもらえないケースも「ざらにある」という。

調査した女性たちは、「圧倒的な絶望感にとらわれている」と、ドゥディアは指摘する。「祖国で迫害されたと訴えても信じてもらえない、内務省は助けてくれない、自分たちの訴えを誰も聞いてくれないという思い」だ。

「疑ってかかる文化」

ドゥディアによれば、内務省には難民認定の審査に当たって、申請者の訴えを「疑ってかかる文化」があり、「それは相手が男性だろうと女性だろうと同じだが、特に女性は不利になる」という。

「男性も性暴力や紛争の犠牲になるが、(社会的立場の弱い)女性はそれ以上に犠牲にされやすい」と、ドゥディアは説明する。祖国で性暴力を受けたと訴えを信じてもらえず、難民申請を却下され、孤立無援の状態になれば、またもや性的虐待のターゲットになりやすい。

内務省は「保護が必要なことを証明するのは、難民認定を申請した者の責任だと考えている」と、ドゥディアは言う。「あり得ないほど信頼性のある首尾一貫した供述をしなければ、申請を受け付けてもらえない」紛争地域などで、女性がいかに弱い立場に置かれ、いかに酷い性暴力の対象になっているか、内務省の職員が「実態を十分に認識していない」ことも問題だという。

イギリスで過酷な生活を強いられているにもかかわらず、「私が話を聞いた女性は全員、イギリスに留まりたいと言っていた。(本国に)強制送還されれば、生存すら保障されないからだ」と、ドゥディアは言う。

彼女たちはいつか難民認定されるだろうと、かすかな希望にすがっているが、認定を待つ間は就労もできず、公的サービスも受けられない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀の12月利下げを予想、主要金融機関 利下げな

ビジネス

FRB、利下げは慎重に進める必要 中立金利に接近=

ワールド

フィリピン成長率、第3四半期+4.0%で4年半ぶり

ビジネス

ECB担保評価、気候リスクでの格下げはまれ=ブログ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中