最新記事

仮想通貨ウォーズ

仮想通貨ウォーズの勝者はリブラか中国か――経済の未来を決する頂上決戦の行方

THE RACE IS ON

2020年1月25日(土)17時30分
カーク・フィリップス(公認会計士)

リブラの価値は法定通貨のバスケットに連動するから、若干の変動はある。しかし準備資産は元本保証の銀行預金や主要国の国債などで運用されるから安全で、しかも時間がたてば利息が付く。

しかしリブラ協会の決定で、米ドルが他の通貨より高い評価を受けなかったら、金融市場におけるドルの支配的な地位は脅かされる可能性がある。米議会や規制当局が懸念するのもこの点だ。

リブラは、メンバー企業の業態や所在地を分散し、通貨バスケットの構成に変化を付けるといった工夫でリスクを減らそうとしている。バスケット割合は、リブラのトークン所有者にとって最適な配分になるように定期的に再構成される予定であり、米ドルが世界的な優位性を維持するために特別扱いされることはないはずだ。

しかしザッカーバーグはこの件について「私はリブラ協会を代弁することはできないが、アメリカ政府が米ドルを主体にせよという規制を課すことは完全に妥当だと思う」と心にもないことを述べ、「規制当局の承認なしにリブラを立ち上げることはできない」とまで言った。

ドルが主要通貨でなくなる日

しかし米規制当局がドルの優位性を確保しようとしても、不利な戦いは避けられない。リブラ協会の全会員に、米ドルの割合を人為的に50%に維持することを認めさせる必要があり、他の法定通貨は「二級市民」の立場に追いやられてしまう。

また当局によるリブラの「承認」プロセスには時間がかかり、仮想通貨としての確立が、デジタル人民元のようなCBCDや他の競合通貨に先を越される可能性がある。JPモルガン・プライベート・バンクは今年7月、顧客メモでこの状況をこうまとめた。

「米ドルはほぼ1世紀にわたり世界の主要な準備通貨だった。だがわれわれはドルが世界の主要通貨としての地位を失う可能性があると考える(中期的には下落する可能性がある)。それは構造的な理由と周期的な障害のためだ」

ドルが決済に使われる世界の計算単位になっているからこそ、アメリカは自国通貨で輸入品を購入し、債券を発行し、それでも永続的に赤字を垂れ流すことができる。これをフランスの元財務大臣バレリー・デスタンは「法外な特権」と呼んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、パレスチナ指導者アッバス議長にビザ発給せず 国

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」

ビジネス

米国株式市場=反落、デルやエヌビディアなどAI関連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中