最新記事

イラン情勢

ウクライナ機は本当にイランが撃墜したのか?

Iranians Shot Down Ukraine Flight, Probably by Mistake, Sources Say

2020年1月10日(金)14時38分
ナビード・ジャマリ、ジェームズ・ラポルタ、シャンタル・ダシルバ、トム・オコナー

テヘラン郊外で墜落したウクライナ機の残骸を調べる赤新月社のスタッフ(1月8日) Nazanin Tabatabaee/WANA/REUTERS 

<トランプ米大統領やトルドー・カナダ首相は、撃墜の可能性あると話したが、具体的な証拠はまだない>

1月8日、ウクライナの旅客機がイランの首都テヘランの空港を離陸した直後に墜落。乗客乗員176人全員が死亡した。アメリカとイランの軍事的な緊張が高まっていた時だけに、事故直後からイラン撃墜説がまことしやかに囁かれていたが、それが今有力な仮説として浮上している。アメリカの当局者2人とイラクの当局者1人は本誌に対し、ウクライナ機は本当に、イランの地対空ミサイルで撃墜されたと話した。

ウクライナ国際航空が運航するボーイング737-800型機は、テヘランからキエフに向かう予定だったが、離陸直後に通信が途絶えた。この前日、イランは隣国イラクにある複数の米軍基地に向けてミサイルを発射していた。前述の3人の当局者は本誌に対し、問題の旅客機はロシア製のTor-M1地対空ミサイルによって撃墜されたとみられると語った。

ウクライナ機「撃墜」の瞬間とみられる動画


米国防総省の高官1人と米情報機関の高官1人によれば、国防総省は旅客機の墜落を「イランにとって想定外の誤射」だったとみている。情報筋によれば、アメリカが3日にイラン革命防衛隊の精鋭部隊「クッズ部隊」のカセム・スレイマニ司令官を殺害したのを受けて、イランは地対空ミサイルシステムを作動させていた可能性が高い。

トランプ「間違いはあり得る」

本誌の報道を受けてドナルド・トランプ米大統領は記者団に対し、「疑念はある」と語った。「旅客機は非常に危険な地域を飛行していた。誰かが間違いを起こすことはあり得る」

米中央軍はこれについてノーコメント、国家安全保障会議(NSC)と米国務省にもコメントを求めたが返答はない。

旅客機の墜落を最初に報じたイランの報道機関は、「原因は機械の故障とみられる」という赤新月社(赤十字に相当するイスラム圏の組織)の見解を伝えた。在テヘランのウクライナ大使館も当初は同じ見方を示していたが、政府から結論を急ぐべきではないという警告を受け、後にこれを撤回した。

事故の翌日、テヘラン付近で発見されたというTor M-1ミサイルの破片とみられる写真が出回り始めた。ウクライナ国家安全保障当局のオレクシー・ダニーロフ長官は声明を出し、イランと協力して事故原因の調査を行っているとした上で、Tor M-1システムとの接触も考えられる原因のひとつだと指摘。そのほかに考えられる原因として、無人航空機などの飛行物体との衝突、機械の故障とテロ攻撃を挙げた。

<参考記事>イラン司令官殺害が象徴する、イラク・シーア派への米政府の「手のひら返し」
<参考記事>トランプが52カ所攻撃するなら、イランは300カ所攻撃する

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と初会談 「多くの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中