最新記事

日産

ゴーン追放で日産が払った大きな代償

Ghosn’s Escape from Japan is Now Legendary

2020年1月9日(木)18時05分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

不満が一気に高まったのは2015年。当時フランスの経済相だったエマニュエル・マクロン現仏大統領が突然、フランス政府のルノー株保有率を15%から20%近くに引き上げたときだ。フランス政府はこれで、ルノーのいかなる決定も拒否できる立場になった。これにはゴーンも日産の守旧派も慌てた。日産が、フランス政府の付属物になりかねないからだ。

ゴーンはなぜこんなことを許したのか、と社内は騒然とした。「彼は外国人で、フランスのパスポートをもっているのだから、こうした問題に対処すべきは彼だ、と思われていた」と、日産の執行役員の元顧問は言う。フランス政府は結局、日産本社の強い要請を受けてルノー株の保有率引き上げを断念、日産の取締役会の決定には一切反対しないと確約した。

日産から東風へ

ゴーンの友人や顧問らによれば、当時ゴーンの下で日産の副会長を務めていた西川廣人ら日産の長年の幹部らは、ゴーンが築いたグローバル連合──三菱自動車に加え、中国、ロシア、東欧の企業も参加──において、日産の重要性が低下しつつあることに危機感を抱いていた。

杞憂ではない。ゴーンは、前々から企業連合を統括する「中枢の戦略的持ち株会社」を設立する構想を温めていた。1案では、日産の株式は持株会社の株式24%に交換されることになっていた。

しかもゴーンはしだいに中国市場に注力し始めていた。中国市場で継続的にシェアを伸ばす上で、主力になるのは日産ではなく、武漢に本社を置く中国の国有自動車メーカー、2000年代初めから日産と提携している東風だ。だがゴーンは2017年、ルノーと東風の合弁により中国で電気自動車の製造を開始するという計画を発表。ゴーンはこの合弁会社が世界最大の自動車市場である中国市場を支配すると確信しており、日産の幹部はますます不満を募らせた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中