最新記事

連続レイプ事件

男性190人をレイプした男、英で終身刑に その恐るべき二面性

Man Jailed for Raping 48 Men Dubbed 'Britain's Most Prolific Rapist'

2020年1月7日(火)16時00分
イワン・パーマー

1月6日に終身刑を言い渡された「英史上最多のレイプ魔」、 インドネシア人のシナガ(36) The Crown Prosecution Service (CPS)/REUTERS

<まじめそうな博士課程の留学生のふりをして、男を自室に誘ってはレイプドラッグで意識を失わせて一晩中レイプし、鑑賞用にその動画を残す──10年間捕まらずに犯行を続け、警察が犠牲者は190人以上にのぼると言う「邪悪な」インドネシア人が終身刑に>

イギリスで190人の男性をレイプしたとみられる男が、そのうち48人のレイプで有罪になり、刑務所に入れられた。

レインハード・シナガ(36)は、マンチェスター刑事法院で6日、136件の異なるレイプ現場を2台のスマホで録画していた容疑に対する裁判も含めて159件の罪で有罪とされ、終身刑を言い渡された。警察によると、動画からは被害者は190人以上にのぼるとみられるという。

インドネシアの裕福な家の出身で、2007年に勉強のためイギリスに留学したシナガは、北部マンチェスターの学生に人気がある一角でナイトクラブやバーをうろつきながら襲う相手を物色した。

警察によれば、シナガは潜在的な目標に話しかけ、酔っ払って孤独で、無防備な男性を狙って家に連れ帰った。被害者の男性はほとんどが白人の若い異性愛者だった。

シナガはレイプドラッグのGHBと思われる薬で相手を意識不明にしてからレイプし、その模様を撮影した。暴力が数時間におよんだケースも複数あったと言う。

webw200107-rape02.jpg

犯行現場の室内


シナガの極端な犯行が明るみに出たのは、2017年6月に被害者の一人が途中で意識を取り戻してから。18歳の彼はシナガと戦い、彼のiPhoneを奪って逃げ、通報した。

シナガのスマートフォンや電子機器を調べたマンチェスター警察は、DVD250枚分のデータに相当するどぎつい動画を発見した。シナガが被害者をレイプする動画だ。

捜査当局は、有罪となった48人の件を含め、全部で190人以上の被害にシナガを結びつける証拠を掴んでいる。警察によれば、捜査の過程で浮かび上がったが今も身元のわからない被害者が70人おり、彼らを探しているという。

「レインハード・シナガはイギリス史上で最多の大量レイプ魔だ」と、検察局のイアン・ラシュトン副検事は声明で言った。「誰に何をしても許されるという極端な傲岸さは信じがたい。もし捕まっていなければ、今も被害者を増やし続けていただろう」

「シナガはモンスターだが、見た目が優しそうなので被害者は騙されてしまった。多くは、泊めるところを提供してくれた彼の親切さにお礼を言っている」

「だが、ひとたび自室に戻ると被害者は何をしてもいい単なるモノになる。法廷で彼が撮ったレイプ動画が再生されると、それを人前で見ることや、被害者たちが証言をさせられトラウマを悪化させることに倒錯した喜びを感じているようだった」

金持ち留学生の驚くべき二重生活


公判中、シナガは容疑を否定し、被害者たちはシナガの性的ファンタジーを楽しむために死んだふりをしていただけだと主張した。

証拠として提出された動画では、被害者たちはまったく無反応だったり、イビキをかいたり、なかには吐く者もいた。それなのにシナガは「同意の上の性行為だと言い張った」と、ラシュトンは言う。「こんな馬鹿げた弁護を覆し、有罪にできてよかった」

グレーター・マンチェスター警察副所長のマブス・フセインは、シナガは「邪悪な人間」だったと、判決後に語った。

「外の世界に対しては博士課程の学生で通り、法に従う人々の友人のような顔をしていた」と、フセインは言う。「だが実際は、大量レイプ魔だ。こんなに長く本性を暴かれずに犯行を重ねられたこと自体、彼が計算高い犯罪者である証拠だ」

<参考記事>フランス人記者が見た伊藤詩織さん勝訴とこれからの戦い
<参考記事>なぜレイプ事件は被害者と加害者が逆転するのか?

20200114issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中