最新記事

犯罪

45人殺傷「津久井やまゆり園」植松被告が示す大量殺人犯の共通点

2020年1月8日(水)06時00分
青沼 陽一郎(作家・ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

検察庁へ移送される植松聖被告。 Issei Kato - REUTERS

神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で2016年7月に、入所者ら45人が刺され、うち19人が死亡した事件で、殺人罪などに問われた植松聖(さとし)被告(29)の裁判員裁判が、1月8日に横浜地裁で開かれる。

弁護側は、逮捕後に植松被告の尿から大麻の陽性反応が出たことや、事件前に措置入院した際に「大麻精神病」と診断されていたことなどから、薬物性精神障害による心神喪失状態だったとして無罪を主張する方針だ。一方の検察側は、捜査段階での精神鑑定で「自己愛性パーソナリティー障害」とされたことから、刑事責任を問えるとして起訴している。

この施設の元職員だった植松被告は、2016年7月26日の午前2時頃に、ハンマーで入所者の居住棟1階の窓ガラスを割って施設内に侵入。用意していた結束バンドで職員らを拘束すると、寝ている障害者を持参した刃物で次々と刺していった。

一夜にして、それも午前3時過ぎには地元の警察署に「私がやりました」と出頭していることからすると、わずか1時間ほどの間に45人の首や腹などを刺し、そのうち19人の命を奪ったことになる。まさに過去に類を見ない犯行ではあるが、それでもこうした単独の大量殺害事件を引き起こす人物には、いくつかの共通点を見つけることができる。

事件5ヵ月前、大島衆議院議長に送った手紙

植松被告の場合、特徴的なのは"手紙"だ。事件を起こす5カ月前の2016年2月に、植松被告は東京都千代田区の衆議院議長公邸を訪れ、大島理森衆議院議長宛に手紙を手渡そうとしている。その冒頭から少し引用すると、こうある。

〈この手紙を手にとって頂き本当にありがとうございます。私は障害者総勢470名を抹殺することができます。常軌を逸する発言であることは重々理解しております。しかし、保護者の疲れきった表情、施設で働いている職員の生気の欠けた瞳、日本国と世界の為と思い、居ても立っても居られずに本日行動に移した次第であります。 (中略) 重複障害者に対する命のあり方は未だに答えが見つかっていない所だと考えました。障害者は不幸を作ることしかできません。今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛い決断をする時だと考えます。日本国が大きな第一歩を踏み出すのです。〉

そして、「作戦内容」として、職員の結束バンドでの拘束など、今回の事件の計画を具体的に書いている。さらには、

〈作戦を実行するに私からはいくつかのご要望がございます。逮捕後の監禁は最長で2年までとし、その後は自由な人生を送らせて下さい。心神喪失による無罪。新しい名前(伊黒崇)本籍、運転免許証等の生活に必要な書類。美容整形による一般社会への擬態。金銭的支援5億円。これらを確約して頂ければと考えております。〉

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中