最新記事

欧州

ドイツSPD党首選、連立懐疑派が勝利 メルケル連立政権の先行き不透明に

2019年12月2日(月)09時44分

ドイツ連立政権の一翼を担う社会民主党(SPD)は11月30日、新党首を選ぶ党員投票の結果を公表。保守派との連立に批判的なワルターボーヤンス氏(左)とエスケン氏のペアが勝利し、政権の行方に不透明感が生じている(2019年 ロイター/Fabrizio Bensch)

ドイツ連立政権の一翼を担う社会民主党(SPD)は11月30日、新党首を選ぶ党員投票の結果を公表した。メルケル首相の保守派との連立に批判的なワルターボーヤンス氏とエスケン氏のペアが勝利し、政権の行方に不透明感が生じている。

両氏の勝利を受け、早期の解散総選挙や少数与党の可能性が高まる一方、極右「ドイツのための選択肢(AfD)」が第3党に勢力を伸ばす中で、政局不安にもつながりかねない情勢だ。

ワルターボーヤンス、エスケン両氏は、メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との連立協定を再交渉し、社会的公正や投資、環境政策をより重視した内容に見直すことを求めている。

ワルターボーヤンス氏は公共放送ARDで1日、こうした取り組みに連立相手が非協力的であれば、連立を継続できないという決断を下さざるを得ないと述べた。

一方、CDUに所属するノルトライン・ウエストファーレン州のラシェット首相は放送局ドイチュラントフンクに対し、「再交渉することは何もない」と断言した。

党首選で敗れたショルツ財務相とゲイウィッツ氏のペアは、ワルターボーヤンス、エスケン両氏を支持する考えを示した。SPDの党員は12月6日から始まる党大会で新党首を正式に承認するとともに、連立を巡る投票も実施する見通し。

SPD党員は、新党首が連立離脱ではなく、CDUに財政均衡目標の取り下げや最低賃金引き上げなど一段の譲歩を求めることを提言するとみている。

しかし、CDUのアルトマイヤー経済相はハンデルスブラット紙に対し、財政均衡はCDUの選挙公約の柱の1つだったと述べ、断念すれば若い世代への負担が増すとの見方を示した。

クレックナー農業相も、連立協定の再交渉はあり得ないとし、CDUは公約を堅持すると強調した。

CDUのクランプカレンバウアー党首は、SPDに連立にとどまるよう呼びかけ、既存の連立協定が前進の基盤になると指摘。「CDUにとっては、連立を支持する立場は明確だ。われわれはこれまでの合意に基づく連立を支持する」と述べた。

[ベルリン 1日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部

ビジネス

カタールエナジー、LNG長期契約で日本企業と交渉

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 自社株
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中