最新記事

映画

ホラーをハッピーエンドで封じようとして......『シャイニング』の続編はコケた

Pleasing Two Masters

2019年12月4日(水)18時50分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)

ダンは惨劇が起きたホテルを再訪し、過去の亡霊と対決する (c) 2019 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED

<原作者のキングとオリジナル版監督キューブリックのどちらも喜ばせられない『ドクター・スリープ』>

ハッピーエンドになるかどうかは、どこで物語を終わらせるかで決まる――そう豪語したのは巨匠オーソン・ウェルズ。だがシリーズ物が席巻する今の映画界では、どんな幸せな結末も長くは続かない。

ホラー映画の金字塔『シャイニング』(1980年)はダニー少年が母ウェンディと共に、狂気と酒にむしばまれた父から命からがら逃げる場面で終わる。観客は安堵したが、ハッピーエンドとは言い難い。夫に惨殺されかけたウェンディの心の傷は深いだろうし、ダニーも容易に立ち直れるはずがないように見えた。

立ち直れなかったのは、原作者のスティーブン・キングも同じ。キングがスタンリー・キューブリック監督の映画版を嫌ったのは有名な話で、90年代に自分でテレビドラマ版を制作したほどだ。

だから、キングによる続編『ドクター・スリープ』を映画化するに当たり、マイク・フラナガン監督は難題に直面した。キングの原作に忠実でありながら、キューブリックの映画版と調和する作品に仕上げ、映画版を嫌うキングと映画版のファンの両方を喜ばせなくてはならない。

『ドクター・スリープ』はある意味、そのどちらもやらなかった。映画『シャイニング』を愛する人々にしてみれば、続編は緊迫感が薄く、説明が過剰だ。

『シャイニング』は先住民の墓の上に立つホテルの邪悪な力が災いしたという設定だったが、続編にはローズ・ザ・ハット(レベッカ・ファーガソン)という悪役が登場する。

ローズ率いる「真結族(トゥルー・ノット)」は、ダニーのように特殊な力を持つ子供をさらって拷問し、生気を吸い取る不死身の集団だ。

ハッピーエンドの裏側で

惨劇から40年。ダニー改めダン(ユアン・マクレガー)は米東部の田舎でアルコール依存症を克服しつつある。しかしあの恐怖体験を境にして、彼の心は無残なまでに壊れた。

真結族にも悩みがある。このところ子供から吸い取れる生気の量がどんどん減っているのだ(携帯電話のせいだろうと、真結族の1人は言う)。

真結族と『シャイニング』の結び付きが分かるのは物語の終盤、ダンが特殊な能力を持つ少女アブラ(カイリー・カラン)と共に惨劇の舞台だったホテルに乗り込んでからだ。ダンはホテルで真結族と対決し、過去の悪霊と戦う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、W杯「参加できない」 最高指導者殺害で=ス

ワールド

トランプ氏、イランの標的「ほぼ残らず」 戦闘近く終

ビジネス

米CPI、2月前年比+2.4%上昇 3月のインフレ

ワールド

訂正-IEA加盟32カ国、4億バレルの戦略石油備蓄
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃に支持が広がるのか
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 7
    「邪悪な魔女」はアメリカの歴史そのもの...歌と魔法…
  • 8
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 9
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 5
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 6
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中