最新記事

山火事

コアラ受難、オーストラリアの山火事で絶滅の危機

2019年11月25日(月)19時15分
松丸さとみ

過去最悪の山火事でコアラが危機に...... YouTube

<シドニーに非常事態宣言が出され過去最悪となっているオーストラリアの森林火災。コアラをはじめとする野生動物も多く焼け出されている......>

NSW州だけで350頭のコアラが焼死か

オーストラリアで発生している山火事は、例年にないほどの規模になっている。11月22日付の英ガーディアン紙によると、もっとも被害が大きいのはオーストラリア最大の都市シドニーがあるニューサウスウェールズ(NSW)州だ。165万ヘクタール(1万6500平方キロ)が焼失し、住宅600戸以上が破壊された。死亡者数は6人に上っており、全員が同州で被害にあっている。

RTX77V4H.jpg

救助されたコアラ REUTERS/Stefica Nicol Bikes

また、オーストラリア固有の動物コアラをはじめとする野生動物も多く焼け出されており、米CNNは10月30日の時点で、NSW州でコアラ350頭が死んだ可能性があると伝えていた。また、英デイリーメールは、「NSWとクイーンズランド州ではコアラの生息地80%が焼失し、1000頭以上が死んだ可能性がある。コアラは絶滅したも同じ」とする専門家の話を紹介している。

災害時に動物の救助活動を行う保護団体、国際動物福祉基金(IFAW)によると、コアラは山火事に非常に弱い。というのも、動きが遅いために逃げ遅れるだけでなく、コアラが食糧としており生息しているユーカリの木は、いったん火がつくと燃える勢いも強く火の回りも早い。逃げ遅れたコアラは、樹木全体が火に包まれる「樹冠火」の中で焼かれてしまいかねない。

森林に潜むコアラを見つけ出す探知犬

IFAWによると、森林の中に潜むコアラを人間の目で見つけ出すのは至難の技だ。そんななか、コアラを見つけ出すよう訓練を受けた犬が、山火事からコアラやその他の野生動物を救出する活動を行っている。

bear-the-koala-bushfire-dog.jpg

足に保護ソックスを履いている探知犬 Photo: Facebook/ifaw

CNN(11月19日付)によると、ボーダー・コリーとクーリーのミックス犬「ベア」は、コアラの毛皮のにおいを嗅ぎ分け、生きたコアラがどこにいるかを見つけ出すよう訓練を受けた「コアラ探知犬」だ。クイーンズランド州のサンシャインコースト大学が運営する非営利団体「ディテクション・ドッグズ・フォー・コンサベーション」(保全のための探知犬)に所属しており、IFAWが資金援助を行っている。

IFAWによると、先住民族の保護地域である広さ1000ヘクタール(10平方キロ)のニュンヤ・ジャーゴンでは、2件の山火事が発生、85%が焼失した。この地域には20〜40頭のコアラが生息してると考えられていた。

IFAWがベアを連れて同地域でコアラ探知活動を行ったところ、生きたコアラがいるという反応をベアが示した。今のところまだコアラの確認はできていないが、IFAWは今後も同地域での救出活動を続けるとしている。

ベアは、ペットとして飼われていた犬だった。しかし元気がありすぎ、また執着しすぎてしまう性格であるため、飼い主から里子に出されてしまったのだという。ベアのこうした性格は、探知犬にぴったりだとIFAWは説明する。ペットとしては幸せを見出せなかったベアだが、コアラ探知犬として活躍することでベアの将来も安定したものになるとIFAWはCNNに語った。

下着姿でコアラ救助の女性

他にも、コアラ救出劇がいくつか報告されている。CNNによると、動物の訓練組織であるテート・アニマルズは、コアラ探知犬テイラーの活躍でこれまで8頭のコアラを救出した。テイラーは4歳のスプリンガー・スパニエルで、ベアとは異なり、コアラのふんのにおいを頼りに探知を行う。

また、大やけどを負ったコアラを女性が命がけで救助した話も話題になっている。コアラを助け出したトニ・ドハーティさんは、豪州民放テレビ局ナイン・ネットワークの取材に答えて、火の中に向かっていくコアラに気づいて、慌てて車から降りて救助に向かったと話した。


ドハーティさんがコアラを救出する様子をとらえた動画によると、毛皮に火が付いたコアラは、混乱したように火の中に向かっていくところだった。ドハーティさんは、何かで包まなければと思い、とっさにシャツを脱いだという。

後に「ルイス」と名付けられたこのコアラは14歳で、現在はポート・マッコーリー・コアラ病院で看病されている。ユーカリの木を食べるほどの元気はある様子だが、足や腹部などにやけどを負っており、生き延びられる可能性は50%とみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

モディ印首相、中国との「関係改善に尽力」 習主席と

ワールド

インドネシア大統領、訪中取りやめ 首都デモが各地に

ビジネス

中国製造業PMI、8月は5カ月連続縮小 内需さえず

ワールド

ロシア軍参謀総長、前線で攻勢主張 春以降に3500
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 9
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中