最新記事

終末期

ホスピスなのに最期は孤独死!?

For-Profit Hospices Fail to Visit Dying People in Their Final Days: GAO

2019年11月20日(水)17時50分
ブレイク・ドッジ

死は安らかに迎えたい Obencem/iStock.

<ホスピス(緩和ケア)なのに肝心の死に際はケアなし──営利目的のホスピスでそんな実態が浮かび上がった>

営利目的の民間ホスピス(緩和ケア)の多くが、在宅の患者が亡くなる前の3日間に訪問ケアを行っていなかった。米会計検査院(GAO)が最近発表した報告書で判明した。こうした業者の数は80にのぼったという。

GAOの調査は、米保険福祉省内の部署「メディケアおよびメディケイド・サービスセンター(CMS)」から2017年に給付を受けたホスピス業者を対象としたもの。患者の痛みの緩和程度など、ケアの質については営利ホスピスと非営利ホスピスの間に大きな違いはなかった。だが営利ホスピスでは、亡くなる直前に患者を退院させていた施設が450以上あった。

ホスピスについて問題が明るみ出たのはこれが初めてではない。今年初めに米観察総監室(OIG)が実施した全米調査でも、スタッフの資格審査を怠るなど深刻な不備があるホスピスが全体の18%に達した。

GAOの報告書によれば、ホスピスを退院して在宅ケアに切り替えた患者が亡くなるまでの72時間に、正看護師や医師が1度も患者を訪問しなかったケースは、民間では80団体に達した。一方、非営利団体の場合は3団体にとどまったという。

営利、非営利を問わず、ホスピスは大半の対象患者を訪問し、終末期のケアを提供していた。しかし、訪問しなかったホスピスでは、死を待つ患者少なくとも800人とその家族が放置されたという。

<参考記事>介護施設で寝たきりの女性を妊娠させた看護師の男を逮捕

在宅でも重要な緩和ケア

「自宅で死を待つ患者に対するホスピスからの訪問は、質の高いケアを提供する上で不可欠とされている」と、GAOは述べる。「こうした訪問は、感情面をサポートし、死の兆候や死に至る経過について患者の家族があらかじめ知識を深めておくためにも重要だ」

亡くなるまでの1週間に、ソーシャルワーカーや聖職者、宗教カウンセラーを1度も派遣していなかった民間施設は55にのぼり、対象の患者は600人以上に達した。

<参考記事>「インスリンと家賃が同じくらい高い」アメリカから、糖尿病患者がカナダに買い出しに行ったら

ベビーブーム世代が高齢になる中、ホスピスに対するメディケア(高齢者医療保険制度)の支出額も、ホスピスを利用するメディケア受給者の数も急増している。

GAOの指摘によると、「メディケアおよびメディケイド・サービスセンター(CMS)」では、検査官に対し、ホスピスのサービスの質に関する情報を記録するよう指導していない。これでは、ケアの質が劣るホスピスへの指導が行き届かない恐れがある。また、問題のある業者に対してCMSが取れる懲罰措置は、医療費払い戻し制度そのものからの追放しかない。これは、ほとんど場合、違反の中味と比較して罰が重すぎる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中