最新記事

ビットコイン

ビットコインの収益性を「シャープ・レシオ」で計算して分かること

2019年10月24日(木)11時44分
木村兼作(公認会計士)

Dmitrii_Guzhanin-iStock

<リスクに見合ったリターンを獲得できているか? それを教えてくれるのがシャープ・レシオ>

シャープ・レシオ(Sharpe Ratio)は、ファンドや投資商品の投資成績を評価するのに一般的に使われている指標です。単純な投資のリターンではなく、シャープ・レシオが使われるのは、リスクを考慮した上で投資の収益性を評価できるからです。

ちなみにシャープ・レシオは1966年にWilliam Sharpeによって考案されています。William Sharpeといえば、バリュエーション(企業価値の評価)で使われるCAPM(Capital Asset Pricing Model)を考案したことでも有名です。CAPMによりWilliam Sharpeはノーベル賞を受賞しており、このこともSharpe Ratioのcredibilityに貢献していると言えます。

さて、シャープ・レシオの計算式を見ればどのようにリスクが考慮されるかがわかります:
シャープ・レシオ = (リターン - リスクフリーレート) / リスク(標準偏差)

シャープ・レシオはリスクに対するリターンの割合で計算されるため、取ったリスクに対してどれだけリターンが得られたかを表していると理解できます。
1 リターンを上げる
2 リスクを下げる
を行うことでシャープ・レシオを上げることができます。

リターンを上げてもその分リスクが上がってしまうとシャープ・レシオを上げることはできません。では数式に登場する各要素を分解してシャープ・レシオに対する理解を深めていきましょう。

投資の収益性、リターンとリスクフリーレートについて

投資の収益性を評価する上で基本になるのがそのリターンです。ある期間の投資のリターンはシンプルに次の計算式で計算できます:
リターン = (期末時点の投資の価額 - 期首時点の投資の価額) / 期首時点の投資の価額

例えば期末時点で時価が110の投資商品があり、その投資商品の機首時点の時価が100だった場合、その投資商品のその期間のリターンは 10% = (110-100)/100 となります。

シャープ・レシオの数式の分子に登場するもう一つの要素はリスクフリーレートです。リスクフリー(無リスク)な資産は存在しないという議論もできますが、シャープ・レシオを計算する上では米国資産の場合、安全性と流動性が高い短期の米国債であるT-Bill (Treasury Bills)の利率が一般的に使われます。

ここではリスクフリーレートを仮に1%とします。リターンからリスクフリーレートを引いた値を"超過リターン"と呼びます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    あまりの激しさで上半身があらわになる女性も...スー…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 5

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中