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プロが絶賛する極上の音色 世界最高級ピアノができるまで

2019年10月17日(木)15時34分
南 龍太(ジャーナリスト)

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白く見えるのはケース部分に貼られた保護シート。はがせば漆黒


主流は黒、木目や記念モデルも人気

最終工程は完成品に見えるピアノを空調の効いた部屋に3カ月ほど置き、色合いを落ち着かせる作業だ。こうして1台1000万円を超えるスタインウェイのピアノが、地道に丁寧につくられていく。流通しているピアノは黒が多いが、白や、最近は木目の風合いを前面に押し出したモデルも人気という。

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木目のモデル


変わるもの、変わらないもの

スタインウェイの製作工程、その品質と技術の高さ、手作業で作り込むことへの情熱は、創業当時から160年以上たった今も変わっていないという。本社工場にはクイーンズに移転した頃から使われていた、木材を裁断する機械が展示されている。今もちゃんと動き、当時の製作の様子をうかがわせる貴重な遺産だ。

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木材を裁断する機械


一方、スタインウェイ&サンズは時代に応じて適応もしている。ITともつながるハイレゾリューション自動演奏の「Steinway & Sons SPIRIO」は「生演奏との違いを全く感じさせない、偉大なピアニストたちによるパフォーマンスのニュアンスとパワー、情熱を忠実に再現する」(同社)。工場ではそのSPIRIOも製作されていた。

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プラグなどの部品を要する「Steinway & Sons SPIRIO」シリーズ


古き良き時代の技術や理念を大切に守りつつ、時代に合わせて進化を遂げるスタインウェイ。これからもファンに愛されるブランド、名器であり続けるだろう。

南 龍太
「政府系エネルギー機関から経済産業省資源エネルギー庁出向を経て、共同通信社記者として盛岡支局勤務、大阪支社と本社経済部で主にエネルギー分野を担当。また、流通や交通、電機などの業界、東日本大震災関連の記事を執筆。現在ニューヨークで多様な人種や性、生き方に刺激を受けつつ、移民・外国人、エネルギー、テクノロジー、Futurology(未来学)を中心に取材する主夫。著書に『エネルギー業界大研究』(産学社)など。東京外国語大学ペルシア語専攻卒。新潟県出身。お問い合わせ先ryuta373rm[at]yahoo.co.jp」

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