最新記事

企業

プロが絶賛する極上の音色 世界最高級ピアノができるまで

2019年10月17日(木)15時34分
南 龍太(ジャーナリスト)

191015mi14.jpg

白く見えるのはケース部分に貼られた保護シート。はがせば漆黒


主流は黒、木目や記念モデルも人気

最終工程は完成品に見えるピアノを空調の効いた部屋に3カ月ほど置き、色合いを落ち着かせる作業だ。こうして1台1000万円を超えるスタインウェイのピアノが、地道に丁寧につくられていく。流通しているピアノは黒が多いが、白や、最近は木目の風合いを前面に押し出したモデルも人気という。

191015mi15.jpg

木目のモデル


変わるもの、変わらないもの

スタインウェイの製作工程、その品質と技術の高さ、手作業で作り込むことへの情熱は、創業当時から160年以上たった今も変わっていないという。本社工場にはクイーンズに移転した頃から使われていた、木材を裁断する機械が展示されている。今もちゃんと動き、当時の製作の様子をうかがわせる貴重な遺産だ。

191015mi16.jpg

木材を裁断する機械


一方、スタインウェイ&サンズは時代に応じて適応もしている。ITともつながるハイレゾリューション自動演奏の「Steinway & Sons SPIRIO」は「生演奏との違いを全く感じさせない、偉大なピアニストたちによるパフォーマンスのニュアンスとパワー、情熱を忠実に再現する」(同社)。工場ではそのSPIRIOも製作されていた。

191015mi17.jpg

プラグなどの部品を要する「Steinway & Sons SPIRIO」シリーズ


古き良き時代の技術や理念を大切に守りつつ、時代に合わせて進化を遂げるスタインウェイ。これからもファンに愛されるブランド、名器であり続けるだろう。

南 龍太
「政府系エネルギー機関から経済産業省資源エネルギー庁出向を経て、共同通信社記者として盛岡支局勤務、大阪支社と本社経済部で主にエネルギー分野を担当。また、流通や交通、電機などの業界、東日本大震災関連の記事を執筆。現在ニューヨークで多様な人種や性、生き方に刺激を受けつつ、移民・外国人、エネルギー、テクノロジー、Futurology(未来学)を中心に取材する主夫。著書に『エネルギー業界大研究』(産学社)など。東京外国語大学ペルシア語専攻卒。新潟県出身。お問い合わせ先ryuta373rm[at]yahoo.co.jp」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.3万件減の22万400

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ビジネス

米11月CPI、前年比2.7%上昇 セールで伸び鈍

ワールド

米、台湾への武器売却を承認 ハイマースなど過去最大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中