最新記事

米犯罪

全米最悪93人の連続殺人犯が「驚異的」な記憶力で描いた被害者の肖像

FBI Asks Public to Help Investigations into America's Most prolific Serial Killer

2019年10月11日(金)15時20分
ロージー・マッコール

全米最悪の連続殺人犯は殺害した被害者の詳細を記憶していた CNN/YOUTUBE

<93件の殺人事件を自供した73歳の男は、罪滅ぼしのために被害者の肖像画を描いた>

米連邦捜査局(FBI)は、93件の殺人を自供したサミュエル・リトル(79歳)を、全米史上最悪の連続殺人犯と断定した。リトルが自供した事件のうち、1970~2005年に全米29州37都市で発生した50件については、信ぴょう性が高いと見られている。FBIは、その他の事件についてもリトルが描いた被害者の肖像画などの情報を公開して、捜査への協力を求めている。

犯行を重ねていた時期、リトルは売春婦や麻薬中毒者、弱い立場の女性など、弱者に狙いを定めていた。こうした被害者については、警察が捜査に多くの時間を割かないだろうと計算していたようだ。

オハイオ州生まれたリトルは、全米の各州を移動し、特にジョージア州、ネバダ州、カリフォルニア州、フロリダ州で多くの殺人を犯している。ロサンゼルスだけで約20人が犠牲になった。

テキサス州で収監されているリトルから殺人の自供を引き出したのは、テキサス州公安局の職員ジェームズ・ホランドだった。ホランドは、米CBSニュースの取材に対して、リトルが「悪賢く、驚異的な記憶力を持っている」と語っている。リトルが絵を描くことを趣味にしているため、ホランドが捜査協力のために犠牲者の肖像画を描くことを勧めた。

little191011-pic01.jpg

リトルは2005年まで35年間に93人を殺害したと自供した Wise County Police

しかし、なぜリトルはそこまで多くの犯行を続けることができたのか? ホランドがリトルに「どうやって捜査を免れたのか」たずねたところ、リトルは「殺したら、街を出るのさ」と語っていたという。FBIが、リトルと未解決事件や行方不明との関連を見つけても、物的証拠はなく、疑惑しか残されていなかった。

リトルは2012年、カリフォルニア州で麻薬使用の容疑で逮捕され、1980年代以降に発生して未解決事件となっていた3件の殺人でDNAが一致し、3件それぞれの事件で終身刑の判決を受けている。

その後、リトルは93件の殺人を自供した。これまで全米史上最悪の連続殺人犯と言われていたのは、30人の女性を殺害したとして1989年に死刑執行されたテッド・バンディーだったが、リトルの自供が事実であればその3倍以上の人数となる。

「神様が微笑んでくれる」

これらの事件のすべてが確認できている訳ではない。しかしこれまでに自供したことがすべて事実だったことや、現状でリトルの自供を疑う理由がないことから、FBIは捜査への協力を求めている。

それにしても、なぜ今になって犯行を自供したのか? 捜査当局によるとリトルは健康状態が悪化しているため、信仰心から過去の罪を告白したようだ。

「自分の代わりに無実の罪で服役している人がいるかもしれない。もしそんな誰かを助けたら、神様はもっと自分に微笑みかけてくれるかもしれない」と、リトルは話してるという。

killer191011-victim01.jpg

71年か72年にマイアミで殺害した「マリアンヌ」か「マリーアン」。18歳くらいの男性だが本人は女性だと言っていたという。遺体は沼地に沈め、おそらく発見されていないとリトルは言う(FBI)


killer191011-victim02.jpg

93年にラスベガスで殺害した黒人女性。モーテルの部屋で扼殺し、遺体は郊外で遺棄した(FBI)


killer191011-victim03.jpg

84年頃、オハイオ州のストリップクラブの近くで会った当時25歳の白人女性。車内で扼殺し、遺体は「小高い丘」の上で遺棄した(FBI)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:米政府閉鎖解除で統計発表再開、12月利下

ビジネス

マスク氏とフアン氏、米サウジ投資フォーラムでAI討

ビジネス

米の株式併合件数、25年に過去最高を更新

ワールド

EU、重要鉱物の備蓄を計画 米中緊張巡り =FT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中