最新記事

台湾

中国共産党の「断交」作戦で台湾は独立路線に舵を切る

2019年10月3日(木)11時30分
トラビス・サンダーソン (台北在住ジャーナリスト)

来年の台湾総統選の最大野党・国民党の候補である韓も、従来の親中路線と距離を置き始めている TYRONE SIUーREUTERS

<新たに2カ国が外交関係を断絶したが孤立を図る中国の戦略は反発を招くだけだ>

ダブルパンチの断交劇だった。

9月16日に南太平洋のソロモン諸島、20日にキリバスが台湾との外交関係の断絶を通告。ソロモン諸島は21日に、キリバスは27日に中国と国交を樹立した。

今回の一件で、台湾と外交関係を維持する国は15カ国にまで減った。札束外交で国際社会での台湾の孤立を図る中国は、新たに2つの勝ち星を挙げた形だ。こうした中国の戦略は今後も成果をもたらす可能性が高い。

長期的に考えれば、台湾が規模も経済力もはるかに大きい中国と競うのは無理がある。中国が「一帯一路」構想に基づく外交政策の中核に、対外援助を据えているならなおさらだ。

だが、中国政府が見逃している点が1つある。台湾の外交的孤立を狙う戦略によって、中国の利益が損なわれるリスクだ。台湾の孤立は中台統一につながらず、むしろ台湾は国家承認に向けて新たな道を模索することになるだろう。

そうした動きは既に始まっている。昨年8月、中米エルサルバドルが台湾と断交した際、台湾総統府の黄重諺(ホアン・チョンイエン)報道官が「外交関係を全て失う事態を含め、あらゆる可能性を検討している」と、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは報じた。

以来、台湾の政権は断交を主権に対する攻撃と位置付け、非難の語気を強めている。市民の反応も同様だ。台湾の若者たちは14年、当時の国民党政権の対中融和姿勢に反発し、「太陽花(ヒマワリ)革命」によって立法府を占拠した。

国際社会で孤立が進めば、怒る台湾市民は政治家に、中国の台湾での影響力拡大を招きかねない政策を拒否するよう迫るだろう。そうなれば、中国が台湾で政治的に手を組む相手を見つけることは難しくなる。

「独立国家・台湾」への道

中国政府は先頃、来年1月に予定される台湾総統選の野党・国民党候補、韓國瑜(ハン・クオユィ)高雄市長への支持を表明。伝統的に親中派である国民党中心の「青色陣営」を今も連携相手候補と見なしているが、国民党が中台統一を検討できる状況にあるとは考えられない。

以前は対中関係強化を訴えていた韓だが、一国二制度を実現させるなら「私の屍を越えて行け」と発言して態度を変化させている。中国政府と国民党の立場のギャップは広がり続け、両者の交渉が実現する見込みはこれまで以上に薄くなっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

あらゆる可能性排除せず、臨機応変に対応=節約要請で

ワールド

イラン、米との恒久的和平協議に前提条件設定 海峡通

ビジネス

パーシング・スクエア、ユニバーサル・ミュージックを

ワールド

フィリピン3月CPI、+4.1%に大幅加速 輸送費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 9
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 10
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中