最新記事

停電

大停電、今すぐにやるべき対策と、再発防止に必要となる備えとは

2019年9月18日(水)11時44分
南 龍太(ジャーナリスト)

相次ぐ重大事案を受け、各社はドローンを活用した被害状況把握の迅速化やスマートフォンのアプリを通じた情報発信の強化、災害時に自発的に被災地へ向かう「プッシュ型応援派遣」といった対策を取りまとめ、それらを実行に移してきた。特に北海道電は、19年度からブラックアウトを想定した全体訓練を行うとした。

経済産業省も「電力レジリエンスワーキンググループ」を18年に立ち上げた。老朽化したインフラなどの再点検、強靭化(レジリエンス)を掲げている。

災害に強い都市、道半ば

そうした改善を進めるさなか、今回の台風15号による大停電が起きた。

あらためて見えてきた課題は多い。取り得る対策は、長期的な取り組みと短期的な措置とに切り分けて考える必要がある。

長期的には、レジリエンスに資するとされる「仮想発電所」(VPP; バーチャル・パワー・プラント)や、電線類を地中に埋める「無電柱化」が挙げられ、いずれも国が主導している。

VPPは一定エリア内の太陽光パネルや蓄電池といった電源システムを結び付けて一体的に統御し、1つの発電所に見立てた電力需給の仕組み。需給調整の効率化とエリアごとの自立化が図れると期待される。京セラがITによる電力取引を手掛ける米企業と実証に取り組むなど、先進的な知見は欧米に多い。アメリカのエネルギー事情などに詳しいコンサルティング会社「Bluevision Inc.」の藤本光CEOは、「先行するアメリカやイギリスの取り組みを学び、日本でも適用できるかを探る日本企業が増えている」と説明する。

無電柱化は、電柱や電線の損壊被害が減るとの利点が見込まれる半面、高い工事費などが難点とされる。小池百合子都知事が推し進める東京をはじめ、名古屋、大阪、京都など各都市に推進計画があるものの、はかばかしくない。

これら長期的な対策は地道に実現を図るとして、昨年、今年と大規模災害がこうも立て続けに起きている状況下、まずは先述した被害把握の迅速化と情報発信の強化といった実効的な措置が求められる。今回の千葉の一件でも、送電設備の被害実態と停電長期化の見通しがより早く、正確に分かっていれば、地域住民の避難行動や、域外から届く支援も違ったものになっていたかもしれない。

他にも電力各社は近年、山間部での倒木を未然に防ぐ「計画伐採」や、電線の耐久性を高めるケーブル化といった対策が有効として注力してきた。停電リスクを低減するこれら電力各社の自発的取り組みは、順次進めるべきだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中