最新記事

中国

安倍首相の祝賀ビデオメッセージが中国のCCTVで大写し──中国建国70周年記念

2019年9月27日(金)19時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

日中両国はアジアや世界の平和と繁栄に共に大きな責任を有しています。両国が地域や世界の課題に協力して取り組み、国際社会への貢献を共に進めることは、両国の新たな未来の姿を築くことにつながると確信しています。

(今、私たちはその新しい歩みを始めました。そして、来春の習主席の国賓としての訪日は、両国の新たな未来の姿を打ち出す上で、またとない重要な機会です。日中新時代にふさわしい、有意義な訪日にしていきたいと思います。)

最後に、日中関係のさらなる発展、ご列席の皆さまのますますのご健勝をお祈り申し上げまして、私の祝辞といたします。ありがとうございました。謝謝!

以上だ。

最後の「謝謝(シェシェ)」は皆さんご存じのように「ありがとう」の中国語である。

このような長いメッセージを、お昼のニュースとは言え、ほぼ全文公開するというのは、前代未聞と言ってもいいだろう。

それだけではない。

続いて公明党の山口那津男代表、慰安婦問題に関する「河野談話」で知られる河野洋平氏、日中議連(日中友好議員連盟)会長の林芳正議員(自民党)、かつて映画「君よ 憤怒の河を渡れ」で中国で人気を博した女優の中野良子さんなどの大写しの顔とメッセージが放映され、経済界からもメッセージが寄せられた。

米中貿易戦争と日本への甘い誘い

米中の仲が悪くなったら、中国は必ず日本に微笑みかけてくるというのは常套手段ではあるものの、この日も日本の政財界からの一連の祝賀メッセージの報道が終わると、いきなりトーンを変えてトランプ大統領への弾劾手続きが始まったことを、強い口調で放映し始めた。その露骨なまでの対比に、これもまた唖然として思わず前のめりに画面に食い入ってしまった。

習近平国家主席が安倍首相のこの「友好的」な姿勢を、どれだけ歓迎していることか、考えただけでも空恐ろしい。

今年1月24日付のコラム「日ロ交渉:日本の対ロ対中外交敗北(1992)はもう取り返せない」の後半のグラフに示し、また昨年10月16日付のコラム「日本は中国との闘い方を知らない」で詳述したように、日本は1989年の天安門事件後の西側諸国による対中経済封鎖を解除させて、今日の中国の繁栄をもたらした。

その結果大国になってしまった中国に、又もや跪いて、今度は中国にアメリカを凌駕させるチャンスをプレゼントしようとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド総選挙、2回目の投票始まる 与党優位揺るがず

ワールド

米中関係の「マイナス要因」なお蓄積と中国外相、米国

ビジネス

デンソーの今期営業益予想87%増、政策保有株は全株

ワールド

トランプ氏、大学生のガザ攻撃反対は「とてつもないヘ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中