最新記事

日本外交

日本の「有志連合」参加と改憲の微妙な関係

A Difficult Decision

2019年8月29日(木)17時00分
ミナ・ポールマン

日の丸がホルムズ海峡に?(ジャカルタに寄港中の護衛艦) WILLY KURNIAWAN-REUTERS

<ホルムズ海峡の安全はエネルギー確保上の死活問題だが、トランプのイラン包囲網に加担できないジレンマも>

イラン沖のホルムズ海峡の航行の安全を確保するため、アメリカ主導の有志連合に参加すべきか否か。日本の政界でそんな議論が高まりだしたのは7月中旬。この時点ではまだ日本政府は、アメリカから参加要請があったと公式に認めていなかった。

8月7日、訪日中のマーク・エスパー米国防相が岩屋毅防衛相との会談で参加を要請。岩屋は原油の安定供給やアメリカとの同盟関係、イランとの友好的な関係などを踏まえ、総合的に判断したいと伝えた。

これまで日本はイランとおおむね良好な関係を保ってきた。日本のエネルギー需要がそれを支える大きな要因だった。

2015年7月にイランと米英仏独中口の6カ国が締結した核合意に日本は参加していないが、合意が切り開いた新たな機会を生かそうとイランに熱心な働き掛けをしてきた。同年10月には、当時の岸田文雄外相がイランを訪問。2国間の投資協定や、日本がイランの核合意履行を支援する方法について協議した。

ただ日本に限らず、どの国も単独で対イラン外交を展開するのは難しい。ドナルド・トランプ米大統領は昨年5月、核合意から離脱。イランに対する制裁措置を再発動し、同盟国にもイラン産原油の輸入禁止を求めた。日本、中国、韓国、台湾など8カ国・地域は特例的に全面禁輸措置を除外されていたが、今年5月にこの除外措置も打ち切られた。

トランプ政権にとってイラン封じ込めは重要な戦略的課題だ。そのためイラン、もしくはホルムズ海峡に関する日本の選択は事細かく精査され批判されるだろう。日本がアメリカの圧力に屈しなかった場合はトランプ政権から批判され、屈した場合は国内世論から非難される。

とはいえ、日本もイラン外交ではアメリカの指示待ちではなく、今も独自な働き掛けを続けている。イランのジャバド・ザリフ外相が8月末に訪日する予定で、ホルムズ海峡の安全確保はイランと周辺国の責務であるというイランの立場を安倍政権に説明するだろう。

世論は海自派遣に難色

イランと友好関係を保ちつつ、アメリカをなだめるにはどうすればいいのか。1つの可能性として、米主導の有志連合とは別に、海上自衛隊をホルムズ海峡周辺に派遣することが考えられる。あるいは紅海の出口に当たるバブエルバンデブ海峡に海自の艦船を送り込む手もある。こちらへの派遣なら、イランはさほど神経をとがらさないだろう。

読売新聞の報道によれば、海自が情報収集の名目で監視活動を行う艦船を派遣することは法的に可能だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感指数、2月は91.2に上昇 雇用

ワールド

ウクライナ大統領「独立守った」、ロ侵攻から4年 G

ワールド

米、重要鉱物価格設定にAI活用検討 国防総省開発

ビジネス

AIが雇用市場を完全に覆すことはない=ウォラーFR
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 6
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中