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日本の「有志連合」参加と改憲の微妙な関係

A Difficult Decision

2019年8月29日(木)17時00分
ミナ・ポールマン

ただ、日本の世論は海自を中東に派遣することに強い抵抗がある。共同通信社の調査では、海自の有志連合参加に反対する人は57.1%に上っている。

知日家の政治学者ポール・ミッドフォードによると、日本の世論は比較的安定している。上からの掛け声では簡単に操作できないし、政策立案に一定の歯止めをかける要因になっている。

日本の世論が自衛隊の海外派遣を認めるかどうかは、安倍政権の信頼度だけでなく、米政府の信頼度にも左右される。対イラン政策ではトランプ大統領が、ホルムズ海峡上空での米軍ドローン撃墜に対するイランへの報復攻撃を命じたかと思えば、直前で中止するなど危うさを露呈している。この状況では、自衛隊が米主導の作戦に加わることに多くの日本人が難色を示すのも無理はない。

有志連合参加は、安倍首相にとって2015年に成立した安全保障関連法に基づく「積極的平和主義」の試金石となる可能性もある。ただ現状では世論をはるか後方に置き去りにするような動きは避けたほうが賢明だ。

世論が安倍政権に不信感を持つ理由は既にいくつもある。完全に信頼を失ったら、安倍首相の悲願である憲法改正の議論を始めることは今以上に困難になるだろう。

From thediplomat.com

<本誌2019年9月3日号掲載>

【関連記事】日本も参加要請されている「有志連合」から、ドイツがいち抜けた
【関連記事】米イラン戦争が現実になる日

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