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フランス外交

フランス美食外交に潜む深謀遠慮──異色外交官が明かす食と政治の深い関係とは

2019年8月21日(水)18時00分
吉田理沙(パリ在住ジャーナリスト)

国際政治の専門家であるグルノーブル政治学院のイヴ・シュメイユ教授はこう指摘する。

「(響宴外交において)美食は外交政策を物語る要素と思われているが、実はそうではない。響宴外交とは、頑強な交渉相手を懐柔し、争いを避けるためにこそある」

「年月を経たワインはフランスの歴史の深さを強調するものだ。大統領府エリゼ宮のワインセラーは特筆すべきワインの宝庫であり、アメリカの賓客は自国が決して作り得ないワインを、希少な食器を用いて素晴らしい会場で、卓越した礼儀作法とともに堪能する。このような洗練さにたどり着くには何世紀も要する。こうしたメッセージが響宴を通じて伝えられている」

18世紀のフランスの政治家であり、食通としても名高いブリア=サヴァランは、名著『美味礼讃』の中でこう言っている。「食事は政治の手段となり、人民の運命は宴会において決せられた」

フランスの美食外交はシンプルでありながら奥が深い。来たる「食のダボス会議」も然りだろう。

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