最新記事

ブレグジット

イギリスが強硬離脱すれば、南北アイルランドは統合へ向かう

Will Brexit Be the End of the United Kingdom?

2019年8月13日(火)16時25分
ジョナサン・ゴーベット(アイルランド在住ジャーナリスト)

南北双方の警察当局も、リアルな国境が復活すれば過激な勢力が武装闘争を再開する可能性があると警告を発している。実際、4月には北アイルランドのカトリック系過激派が女性ジャーナリストのライラ・マッキー(29)を殺害する事件があった。

こうした状況であればこそ、アイルランドの南北統合を求める声が増えている。

「北アイルランド住民の過半数は残留を選んだのに、それでもEUを追い出される。そういう事態だから流れが変わった」とクイーンズ大学ベルファスト校のハーベイは言う。「98年の和平合意はアイルランドの将来に関する住民投票の権利を認めている。今こそ私たちはその準備を始めるべきだ」

4月段階の調査によると、南側では有権者の62%前後が南北統合を支持。一方、北では3月の調査で45%が統合に反対し、賛成は32%にとどまった。ただし「分からない」という回答も23%あった。

「『分からない』派の多くが支持に転じたら僅差の勝負になる」とリバプール大学のトンジは言う。「離脱後に国境管理が厳しくなればなるほど、統合への支持が増えるだろう」

イギリスのボリス・ジョンソン首相は「合意なき離脱」に舵を切っているから、リアルな国境が復活する可能性は高い。それを見越して、アイルランドのレオ・バラッカー首相は7月26日の演説でこう言ったものだ。「皮肉なもので、強硬離脱を選べば(大ブリテンと北アイルランドの)連合王国の団結が揺らぎかねない」と。

そのとおり。トンジも言う。強硬離脱のシナリオは「連合王国の一体性に対する前例のない挑戦を招いている。北アイルランドだけでない。スコットランドやウェールズにも反発がある。30年後も連合王国が今の形で存続しているかと問われれば、極めて難しい問題だとしか答えようがない」。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2019年8月13&20日号掲載>

2019081320issue_cover200.jpg
※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。


ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 3
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「CT写真」で体内から見つかった「驚愕の塊」
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 8
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 9
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 10
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中