最新記事

日韓関係

歴史問題に根ざす日本と韓国「半導体輸出規制」対立の行方

2019年7月15日(月)17時55分

日本政府が発動したハイテク材料の輸出審査の強化は、元徴用工問題をめぐって長年続く韓国との争いをさらに激化させた。写真は、都内の港に積まれたコンテナ(2019年 ロイター/Toru Hanai)

日本政府が発動したハイテク材料の輸出審査の強化は、元徴用工問題をめぐって長年続く韓国との争いをさらに激化させた。

今回の輸出管理強化で明らかになったのは、世界第3位の経済大国・日本が、依然としてグローバルなサプライチェーンの重要な部分を握っているということだ。日本の半導体産業はすでに韓国に追い越されたものの、その部品や素材の分野では主要プレイヤーであり続けている。

今回日本がターゲットにした材料はどういうものか、どの企業が影響を受けうるのか、さらに今後の追加規制の可能性、問題の背景にある日韓の対立をまとめた。

●何が規制されるのか

対象はフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素(エッチングガス)。フッ化ポリイミドはスマホのディスプレーに使われる。レジストは半導体ウエハーに回路パターンを転写するために塗布される薄い膜。フッ化水素は同じく半導体の製造工程で、不要な部分を溶かして除去するために使われる。

●日本の市場シェア

日本のメディアによると、日本はフッ化ポリイミド生産で世界の約90%、エッチングガスで約70%を占める。一方、政府の資料によると、レジストのシェアは約90%。韓国の半導体メーカーが、代わりの供給元を探そうと思っても難しいのが実情だ。

韓国が今年1─5月の間に日本から輸入したこの3つの材料は、金額に直すと1億4400万ドル(約156億円)に上る。韓国政府のデータによると、韓国が輸入したフッ化ポリイミドの94%、エッチングガスの44%、レジストの92%を占める。

メモリで高いシェアを握る韓国の大手半導体メーカーの関係者は、国内各社は在庫を備蓄する努力をしなければならないと話す。

●影響を受ける企業は

サムスン電子、SKハイニックス、LGディスプレーはいずれも影響を受けそうだ。

複数のアナリストによると、日本側のサプライヤーには、JSR、東京応化工業、信越化学工業、ステラケミファ、ほかには昭和電工、関東電化工業が含まれる。

●在庫はどのくらい

サムスン電子とSKハイニックスは、こうした材料のほとんどを日本に頼っているが、フッ化水素の一部は中国から輸入している。複数の専門家は、韓国企業は一部材料については最大4カ月分の在庫を確保しているという。

野村証券のアナリスト、岡嵜茂樹氏は、例えばレジストは経年劣化するため、在庫を積み増すのは難しいと語る。エッチングガスも大量の備蓄が困難だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、今後5年のミサイル開発継続を示唆

ワールド

ブラジル大統領選、ボルソナロ氏が長男出馬を支持 病

ワールド

ウクライナ大統領、和平巡り米特使らと協議 「新たな

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中