最新記事

ファクトチェック文在寅

「韓国の反論は誤解だらけ」

ILLUSION THEORY

2019年7月25日(木)18時50分
古川勝久(安全保障問題専門家、元国連安保理北朝鮮制裁専門家パネル委員)

韓国国内ではこれまで、NSG規制対象の工作機械類の不正輸出事案が多数、摘発されていた。その中には、17年6月から19年3月までの間の取引金額8000万円以上の事案が少なくとも4件含まれている。

本来、核関連物資として厳密な輸出管理が義務付けられている物品や、生物・化学兵器やミサイル、通常兵器に転用可能な機微な物品が不正輸出されていた。韓国企業の中には依然、輸出管理面での内部管理体制が緩い企業が少なからず存在するようだ。

この数年来、韓国政府内でも「反復的な戦略物資不法輸出事案」の摘発事案が急増していることが問題として自覚されていた。例えば、韓国産業省の18年度「例年報告書」では、「戦略物資不法輸出事案の摘発件数が急増した原因」として、「関係行政機関による処罰が生ぬるい」点に言及している。

アメリカや日本と異なり、韓国の場合、個別の事案の詳細や、違反した韓国企業の名前を公表しない。不注意による違反か、悪質な違反かも説明がない。韓国の貿易相手国からすれば、自らの取引相手である韓国企業が過去に何らかの不正輸出に関与したのか判断が難しい。不正輸出された156件の貨物の中に、果たして海外から韓国に輸入されていた製品がどれほど含まれているのか不明である。

「わが国の輸出統制体制を蔑視する試みを中断することを、日本にもう一度厳重にうながす」と、フジテレビの報道後、韓国産業省はコメントした。現在の産業省には、昨年の「例年報告書」で見せた輸出管理面での問題を自省する姿勢は見受けられない。

慶応大の森本氏が指摘するとおり、輸出管理上の重要な点は、自国から輸出される物品や技術が意図せずに兵器転用される懸念を払拭することである。

日本政府によると、先の3品目について、「懸念される事案」が複数発生していたが、韓国政府も韓国企業も日本の協力要請に応じなかったという。文政権はこれを否定していない。

軍事転用可能な物品や技術を輸出する際には、事前にしっかりと最終需要者と用途を確認することが不可欠である。貨物が韓国に輸出された後、韓国政府が協力しないのであれば、日本から貨物が輸出される前の時点で取引相手の韓国企業や物品の最終用途などについてしっかり確認を取るしかない。

従来のように韓国を「ホワイト国」扱いし、輸出の際に何もチェックしないという状態を続けるわけにはいかない。

現在、韓国政府は、アメリカ政府や国連、WTOに「日本の不当な措置」を訴えている。しかし、文政権が真摯に向き合うべきは、ほかならぬ日本のはずだ。輸出管理をめぐり、2国間で協力すべき課題は山のようにある。

もとより韓国も、世界の安全保障のために輸出管理を行っているはずだ。韓国の輸出管理体制の問題を是正することは、韓国国民のためでもある。

<2019年7月30日号掲載>

20190730issue_cover200.jpg
※7月30日号(7月23日発売)は、「ファクトチェック文在寅」特集。日本が大嫌い? 学生運動上がりの頭でっかち? 日本に強硬な韓国世論が頼り? 日本と対峙して韓国経済を窮地に追い込むリベラル派大統領の知られざる経歴と思考回路に迫ります。


ニューズウィーク日本版 高市vs中国
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「高市vs中国」特集。台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中