最新記事

香港

デモ激化させた中国共産党下の香港への絶望 四畳半の怒れる若者たち

2019年7月11日(木)13時00分

香港を揺るがし、中国政府を怒らせた激しいデモの先頭に立ったのは若者だった。写真は香港のアパート。6月撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)

香港を揺るがし、中国政府を怒らせた激しいデモの先頭に立ったのは若者だった。容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案への反発を契機としたデモの根底には、ますます介入を強める北京の共産党政府によって市民の自由が脅かされ、香港の自治が損なわれることへの懸念があった。

中国政府は、かつて英領だった香港の完全な民主化を拒否している。

だが、世界で最も人口密度と物価が高い街の1つ香港に住む若者の多くは、生活費の高騰や、住宅所有は夢でしかないというあきらめに怒りを募らせている。

ロイターは、親と同居し、狭い部屋で暮らす若い世代11人に取材し、政治的な懸念や香港での生活の不満について聞いた。

小学校教師のユーニス・ワイさん(30)は、レインボーカラーのシーツに覆われた自分のベッドに座り、香港の人たちが中国政府のせいでいかに息苦しい思いをしているかを話した。「彼ら(中国政府)は市民への支配を強め、われわれの自由を奪っている」と、広さ7.4平方メートル(4畳ほど)の自室で語った。

だがワイさんは、生活を難しくしている問題は他にもあると指摘。特に問題なのが住宅政策で、富裕層をより豊かにする不公平なものだとワイさんは言う。

「住宅問題は非常に重要だ。香港は土地が狭く、アパートを買うのに苦労する人が多い。不動産会社が市場を牛耳っている」

1997年に英国から中国に返還された香港では、「一国二制度」の下、抗議デモを行う自由や独立司法など、本土にはない自由が認められている。

だが香港の住人の多くは、中国政府が徐々に締め付けを強め、直接選挙による行政府長官の選出も認めないことに不満を感じている。

中国側は香港への介入を否定し、先週末に暴徒化したデモは一国二制度への「まぎれもない挑戦だ」としている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUの「ドローンの壁」構想、欧州全域に拡大へ=関係

ビジネス

ロシアの石油輸出収入、9月も減少 無人機攻撃で処理

ワールド

イスラエル軍がガザで発砲、少なくとも6人死亡

ビジネス

日銀、ETFの売却開始へ信託銀を公募 11月に入札
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 8
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中